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米国のノンフィクション作家として右に出る者がいないと言えるマイケル・ルイスの最新作。一昨年に出版されたベストセラー「世紀の空売り」はサブプライム危機の発生を読み、莫大な資金を稼いだファンドマネージャーについて書かれた作品でしたが、「ブーメラン」はその続編で、サブプライム危機が欧州に飛び火し、深刻な事態となっているアイスランドやギリシャなどの重債務国についての作品です。

アイスランドは、銀行がヘッジファンドのように世界中の資産を買い集め、手を広げ過ぎた挙句、国家が破綻し、通貨は紙くずと化しました。ギリシャは、過激な運用には手をだしていませんでしたが、ユーロに加盟するために国の財政を粉飾した上に、怠慢な国民性が重なり、現在の財政危機を招きました。

アイスランドは、2003年にアメリカからやってきた投資銀行家によって、漁師たちの国から、銀行や投資家が巨額の借金をしたうえで、世界中の買いあさる金融国に変貌します。

2007年にかけての3年半で、アイスランドの株価は9倍に膨れ上がり、不動産価格は3倍になりましたが、米国でのサブプライム危機の発生によりバブルは崩壊し、2008年10月にアイスランドという国家は事実上、破綻してしまいます。さらに株価も85%の大暴落を起こし、不動産価格も急落したことで海外から調達した借金の大部分は返せなくなり、財政破たん後には国民1人あたり3,000万円近くの借金をかかえることとなりました。

一方のギリシャは、国民の4分の1が公務員で、公務員が民間企業の約3倍の給料をもらっていました。人々は日常的にわいろを受け取り、脱税をし、さらに退職年齢は男性が55歳、女性が50歳であった上に、現役時の収入の8割近くの手厚い年金も受け取っていました。

他にも、アイルランドの経済危機や、こうした重債務国の救済に奔走するドイツなど、欧州各国の混乱ぶりが次々と暴かれます。本書を読むと、欧州危機の根が深刻で、簡単には解決できないと理解できるでしょう。

そして、サブプライム危機と欧州危機を共に予言した敏腕ヘッジファンドマネージャーが、次に財政破たんを予測している国は日本とフランスであることも明かされます。マイケル・ルイスの著作の割には、話の展開に一貫性がなく場当たり的な描写も多いので、星3つと評価しましたが、日本の信用不安が気になる人は読んで損のない良作です。