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1980年代に当時世界の頂点にいた投資銀行ソロモン・ブラザーズに就職し、長くトレーダーとして活躍した人物の回顧録です。

10年以上前に出版されていますが、今読んでもなかなか興味深い内容です。個人的には自分が経験していない1980年代後半の国内マーケットの異常な過熱ぶりと、一転して下落一色となった90年代の国内相場で外資系の投資銀行がどのように稼いでいたのかが、最も興味をひかれたポイントでした。

著者は、ソロモンがトレーダーの楽園から、複雑な政治が横行する巨大組織となる過程で息苦しさを感じ、30代半ばで引退をしてしまいます。その後はどのように生活しているかは知らないのですが、一度マーケットの刺激にどっぷりとつかった人物が、金融市場とは無縁の生活を送ることができるのか知りたいところです。

80年代のソロモンには、その後世界最大級のヘッジファンドLTCM (ロング・ターム・キャピタル・マネジメント)を創設し、数年間素晴らしいパフォーマンスを残した後に金融恐慌を引き起こしかねないほどの破たんに終わるという、ローラーコースターのような人生を歩んだアービトラージトレードの開祖ジョン・メリウェザーや、マネックス証券を創設した松本大氏など、多士済々でした。

同じように、若いころから金融の世界で生きてきているので、10年後、15年後に自分も含めてどのようになっているのかと、考えずにはいられません。ただ、一つ言えるのは本書にもあるように、マーケットは過度の楽観と悲観を繰り返し、多くの悲喜劇を生み出していくであろうことです。

こうした金融の世界の人の回顧録は、巨大な自尊心で歪められがちですが、本書は筆者の性格から淡々とした筆致で非常に読みやすく仕上がっています。金融業界で働くことを考えている若い人は読まれることをオススメします。