恐慌の黙示録―資本主義は生き残ることができるのか

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サブプライム危機が発生したメカニズムを5人の経済学者の理論を通して解説するという形をとっています。著者は、サブプライム危機をグローバルで投資資金が飛び交う金融資本主義の終焉と捉えており、資本主義の行く末としてはいわゆる「日本型資本主義」が最適であるとしています。

つまり「雇用の確保」を「株主利益最大化」より上位に位置づけるべきという主張ですが、この点については正直同意できません。実際、この本が書かれた2009年3月は、金融市場がどん底でしたが、その後1年で、新興国を中心に経済は大きく成長し、株式市場も急反発しており、サブプライム危機後もグローバルでの投資活動は回復してきています。

では、この本に魅力を感じないのかというと、そうでもありません。ブッシュ政権では、財務長官を含め経済政策を立案するメンバーのほとんどが金融ビジネス界の出身で、「株主利益至上主義」が政策でも徹底的に貫かれていましたが、単一の考えで凝り固まった組織のもろさを今回の金融危機では露呈しました。

著者は経済産業省の現職の官僚ですが、日本の経済政策立案が多様な主義が交錯する健全な環境で行われていることに安心するとともに、激務の中ここまで骨太の議論をまとめ上げた著者に敬意に値します。