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「クーリエ・ジャポン」で連載をされている町山さんの最新著書です。本業は映画評論家ですが、近年では、日本人がよく知らない米国の実情を明らかにする著書で人気です。

本書は、2012年11月の米国大統領選挙への動きを中心に、米国社会がいかに病んでいて、共和党を中心として政界にはエキセントリックな人物が多いのかがこれでもかと紹介されています。世界最大の米国経済や、世界を席巻しているベンチャー企業など米国の光の部分にしか目が行っていない人には衝撃的な内容でしょう。

米国の共和党の中でもティーパーティ(茶会党)を中心とした保守派には、宗教的に厳格であることを最優先して、「レイプによる妊娠であっても中絶を認めない」、「ダーウィンの進化論を公立校で教えることを禁じる」などという、日本など他の主要先進国では一言で政治生命を断たれるような主張をしている政治家が数多くいます。

こうした保守派にとってオバマ大統領は、政策的にも人種的にも最大の敵で、特に1期目の国民健康保険の導入については、「オバマは社会主義を米国で実践しようとしている」、「オバマ政権はナチスの再来」といったエキセントリックな主張を繰り返していたことが、さまざまなエピソードを交えて紹介されています。

また政治家だけではなく、FOXテレビを代表とするメディアや、茶会党を裏で操る大富豪など、オバマ大統領への恐怖感から先鋭化し行きすぎた米国の保守派の現状がよく分かります。こうした情報は日本のメディアで取り上げられることはほとんどないので、興味深く読める方が多いでしょう。

本書を読むと、アメリカという国が非常に特殊な国で、良くも悪くもとてつもなく懐が深いと感じます。日本がここ50年以上盲従してきた国の実情を知る上でも、一読することをオススメします。