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英国人の生物学者にして、科学啓蒙書の書き手として有名な著者による、人類がこの1万年どのように発展してきたのか、その原動力を解説した大著です。

著者の解説は非常に明快で、人類の発展が、分業とアイディアの交換という個人レベルからのボトムアップの流れにより生みだされてきたということが、この1万年の世界中の様々な場所、様々な時代の豊富な事例から裏付けられています。生物学・文化人類学・環境学・経済学など、分野を横断した著者の該博な知識には圧倒されます。

ボトムアップの予測できない流れにより人類が発展したという著者のスタンスから、政府や大企業による大仰なプロジェクトなどトップダウンの動きは、人類の発展にほとんど貢献しなかったという事例もこれでもかと提示されます。

そして、人類は常に予測できないボトムアップの動きから、乗り越えられないと思われた様々な課題を乗り越えてきて、ここまでの発展をとげてきたので、将来についても過度な悲観は禁物であるというのが著者の結論です。地球温暖化や環境汚染の影響を、識者とされる人々は声高に叫び、経済発展のペースを落とさなければならないという意見がはびこっている現状を憂い、将来について合理的な楽観主義であるべきという主張には同意できます。

この合理的な楽観主義、つまり人類の長期的な成長への楽観は、資産運用においても大切な姿勢です。どのような時代にも、したり顔で否定的な意見を叫ぶ輩は居ましたが、そうした意見はことごとく外れ、ボトムアップのイノベーションにより課題は解決されてきたのです。投資を、次の成長を呼び込むイノベーションを応援するものと捉え、長期間で成果を待つ投資家にとって、本書は大きな心の支えとなるでしょう。