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ベンチャー企業に資金を提供するベンチャー・キャピタルという存在は日本でもメジャーになってきていますが、本書はさらに初期段階にある企業に資金提供をするアクセラレーターに焦点をあてたノンフィクションです。

米国には数多くのアクセラレーターが出てきていますが、その中でも最も成功しているファームが本書の取材対象であるYコンビネーター(YC)です。YCは、企業価値が約50億ドル(約5,100億円)とされるドロップボックスや、同じく約25億ドル(約2,600億円)とされるAirbnbがまだ創業者のみだったタイミングで、投資を行っていたことで注目を集めています。

本書の著者は社内のあらゆるところへのアクセスを許可されたことで、世界で初めてYCが起業家をどのように評価し成長させていくのか、その全貌が明らかになりました。YCは年2回(夏・冬)の3ヵ月間、数十社の企業をシリコンバレーに集めて、YCの創業者ポール・グレアムをはじめ、ほとんどが起業家として成功した経験を持つパートナー陣により、濃密な指導を行うという形態をとっています。3ヵ月の最終日はデモ・デーと言われる全社一斉プレゼンで、そこに集まった数百の著名投資家達に自社の魅力を訴え、資金提供の交渉を行うことでプログラムは終了します。後は、各企業が獲得した資金により、それぞれの本拠地に戻って事業運営をするという、YCは起業家たちのための合宿のような存在です。

DropboxやAirbnbの成功でYCは広く知られるようになり、今や各学期に数千の企業が応募し、その中でわずか数パーセントのみが参加を認められます。各社は150~200万円の少額をYCから提供され、株式の6~7%をYCの持ち分とするところからスタートします。ただ、最近ではYCのプログラムに選ばれたと言うだけで、一定の評価を得たと見なされ、著名なベンチャーキャピタルから数千万円の資金提供を受けられるようです。

もちろん、これだけの資金が提供されるからといって必ず成功できるわけではなく、3ヵ月にわたって起業家たちが厳しいアドバイスを受けながら必死に努力する姿が克明に描かれています。シリコンバレーのように、プログラミングと経営それぞれに秀でた起業家チームに、助言を与えるアドバイザー、そして投資家が一定以上の密度で集積していることが、ベンチャー企業が次々と爆発的に成長していくために不可欠であることがよく分かります。起業を考える全世界の若者にとって必読の好著です。