★★★★

本書の原題は”Idea Man”ですが、日本では著者のポール・アレンの知名度が高くない為に全く異なったものとなっています。原題と日本語のタイトルが大幅に異なるときは、違和感があるものも多くありますが本書のタイトルは内容をよく表していて秀逸です。

ポール・アレンはビル・ゲイツと共に大学生の時にマイクロソフトを創業し、ミニコン向けの言語の開発からIBM PC向けのOSの開発まで、マイクロソフトが世界的な企業へと飛躍していく礎を、ビル・ゲイツと共に築きました。

本書の前半はポール・アレンの生い立ちとマイクロソフト時代について割かれています。彼が世界的企業を創業できた要因として、中学時代から当時まだ珍しかったコンピュータを使える環境にあったことと、同級生に極めて優秀なプログラマーにしてビジネスマンであるビル・ゲイツがいたことが大きかったことが良く分かります。子供時代を過ごす環境の大切さを再認識しました。

彼は30歳を前にして大病をしたことで、マイクロソフトでのビジネスを続けることに疑問を持ち始め、超負けず嫌いで激しい性格のビル・ゲイツとの確執も深刻化したことでマイクロソフトを退職します。ただ、マイクロソフトの20%以上の株式を持ち続けたことで世界的な大富豪となり、NBA・NFLチームのオーナーとなったり、90年代に高速通信システムの構築を目指すベンチャーに投資したりと様々なことに私財を投じます。

本書の後半は、こうした現代の大富豪が成し遂げられる道楽大全集の様相となっていて、上記以外にも世界屈指の脳研究所を設立したり、同じく世界屈指の大きさのヨットを建造して世界中を旅したりと、アメリカンドリームをそのまま1人の人生にまとめたようなエピソードの連続です。

直近に再び大病に罹ってしまったときにビル・ゲイツが頻繁にアレンの下を訪れるというシーンには、ゲイツの悪の帝王というイメージが少し変わりました。アレンは様々なことに私財を投じていますが、最も資金を使っているのは自分が生まれ育ったシアトル近郊のコミュニティへの寄付です。米国社会は成功者をヒーローとして素直に称賛して、社会全体を豊かにする振る舞いへと自然に導いていることはやはり素晴らしいと感じました。