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2009年に米国で出版された書籍の翻訳本が、最近文庫版になったので手に取ってみました。本書の原題は”Googled”で、文字通り世界がグーグルにより変化していっている様子が克明にまとめられています。

変化が非常に激しいIT業界の4年前の本なので、当然ながら大きく状況が変わっている点も多いのですが、本書で紹介された事象がどのような結果となったのか知りながら読めることは逆に新鮮でもありました。本書のかなりの部分は、テレビや新聞などの伝統的なメディアのビジネスモデルが、グーグルを筆頭としたIT企業により変化が迫られているという指摘に割かれていますが、4年が経過した今、こうした伝統的なメディアの衰退はだれの目にも明らかになっています。

一方、本書で先行きに不安もあるとされたグーグルは、スマホの急速な普及にもアンドロイドOSの提供により見事に対応し、モバイル向けやネット動画も含めて広告ビジネスをさらに拡大することに成功し、さらに最近では自動車の自動運転やベンチャー投資など全くの異分野でも存在感を見せつつあります。

IT業界はあまりに変化が早いために、ほんの少し前であってもどのような状況にあったのか忘れがちですが、本書は2009年当時の雰囲気がよく分かり、オールドメディアが結局変化できずにグーグルにいいようにビジネスを奪われる結果に至ったことが、ビジネススクールのケーススタディのように把握できます。

また、本書はメディア嫌いで知られるラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリン両名への取材も繰り返し、彼らの人となりや価値観についても豊富なエピソードともに説明されています。良くも悪くも常識にとらわれず、破壊的なイノベーションにより伝統的な企業を窮地におしやるグーグルのスタイルは、この創業者2名の特性そのものであることがよく分かります。

文庫版では600ページ以上の大著で、同様の内容が繰り返されている部分もありますが、総じてグーグルの実態に良く迫ったレベルの高いノンフィクションです。