レベル4 ★★

著名な投資アドバイザーである橘玲氏による金融小説です。著者の該博な知識に裏付けられ、日本の富裕層の節税や海外移住と、シンガポールでの金融業の実態が様々な場面で描かれています。

グローバル金融都市シンガポールの光だけでなく、影の部分も描くために小説という形態をとったのでしょう。シンガポールで1,000億円を運用するファンドマネージャーが自殺をしたところから物語が始まり、この自殺したマネージャーの妻と闇の金融アドバイザー、しがない翻訳家という3人の同級生を中心としてめまぐるしくストーリーが展開していきます。

シンガポールやジョホールバル、バンコクなど私たちがよく訪れる都市が舞台なので、情景がイメージしやすくその点でも興味深く読めました。ただ、東南アジアの地理に明るくない読者は地名を羅列されても頭に入って来ないのではないでしょうか。

ストーリー展開にも無理が多く、また登場人物のキャラクターもステレオタイプで魅力に乏しいため、物語に没入することもできませんでした。お金の残酷さを描きたいという思いが強すぎることが無理なストーリー展開の要因となってしまっているのでしょう。ノンフィクションを書いてきた著者がフィクションを手掛けることの難しさを感じさせられました。