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超長期的な歴史から見たスケールの大きい論考で知られる水野和男氏の最新作です。ただ、これまでの著作で見られたデータや論考がほとんどで、新しい考察は見当たりませんでした。

また、結論も先進国の金利が直近低迷していることを受けて、もはや資本が利潤を生みだすことができない時代に突入しており、このことから資本主義という概念自体が終わりを迎えているという内容となっていますが、米国の長期金利も2%台後半にまで上昇してきておりこの決めつけは性急すぎるように感じました。

東南アジアを中心として、まさにこれから経済成長が本格化するだろう新興国の様子を目の当たりにしているため、先進国特に日本の現状のみでグローバル経済に成長の余地がなくなってきているという本書の論説には納得しかねます。また、技術発展やイノベーションによる経済成長の余地も一切論考にいれないことも乱暴でしょう。

先進国中間層の没落を憂う内容がたびたび出てきますが、新興国も含めた機会の平等がどうあるべきかなど、より広範囲な議論の展開を著者には期待したいところです。これまでの論考に、広く一般大衆に受けそうな結論のみ強引につけた形式となっていて残念に感じました。

グローバルの経済界では、トマス・ピケティの大著「21世紀の資本論」が大きな話題となっていますが、著者は日本で珍しい大ぶりな経済分析ができる人物だと思いますから、ピケティの本とまではいかなくとも新たな分析とともに21世紀の社会構造がどうあるべきかを客観的に論じる著作を出してもらいたいです。