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本書の著者はIT情報誌「ワイアード」の編集長を長く務めたクリス・アンダーソン氏で、以前の著書「フリー」も大きな話題となりました。3Dプリンターなど製造装置や、モノづくりに関わるソフトウェアの高機能化・低価格化が進んだことで、20世紀の大量集約型製造業と対照的な、小規模でアドホックな製造業が21世紀に拡大していくこということが本書の主張です。

本書の重みを増しているのは、著者自身が長らく活躍したメディア業界から、ドローン製造会社の創業者と転身していることで、まさに本書の主張通りの選択をしていることです。娘を通わせているシンガポールのアメリカンスクールにも3Dプリンターが備えられていて、科学の授業で利用しているのを初めて見た時には驚きましたが、本書を読むと米国では人々のメイカー化がさらに進んでいることがよく分かります。

日本はもちろん、米国でも製造業の中国など発展途上国への流出は重要なトピックとなっていますが、本書ではそれほど悲観する必要がないとしています。今後はオンデマンドの製造需要の拡大に伴って、米国で繁栄を極めるソフトウェア産業と同じく製造業のかなりの部分も米国で十分勝負できるというのがその根拠です。

もちろん、iPhoneに代表される世界的にヒットするハードウェアは今後も出てくるでしょうが、eコマースが趣味のモノを取引するオークションや通販サイトから拡大したいように、個人ベースの小規模な製造業(メイカー)達も、本書の著者のように大手業者では相手にしないニッチな趣味のモノを製造すること頃から拡大していくのでしょう。

本書を読んで、子供と一緒にCADを勉強して、学校の3Dプリンターで何か作りたくなりました。本書の指摘通り、ビット(電気信号によるバーチャルな世界)の世界からアトム(原子でできた実世界)に個人のクリエイティビティを存分に発揮できる環境が広がってきていることにワクワクしています。