レベル3 ★★★★

欧米の経済学者の著作には、とてつもないデータに裏付けられた力作がありますが、本書もその1つです。紀元前から様々な国や地域の経済動向を例にとって、経済発展と衰退を引き起こす条件について解き明かしていきます。

著者が本書で繰り返し指摘していることは、経済に限らず政治や社会も含めた包括的な制度が整っていることが経済発展に不可欠ということです。地理的条件や植生・動物相、遺伝的な条件などが経済発展を生み出したとする、これまで世間でもてはやされてきた理論を、豊富な事例からばっさりと切り捨てています。

本書には投資に役立つインサイトも豊富に盛り込まれています。20世紀後半まで、欧米の経済学者の多くが、ソ連のGDPが米国のそれを凌駕すると予測していたことなどは、現在の新興国投資ブームを俯瞰する上で貴重な情報でしょう。本書では、中国の経済発展など直近の事象が持続可能なものとなるにはどのような変革が必要になってくるかも具体的に指摘しています。また、本書では日本が成功例として度々登場します。明治維新についても詳細に取り上げられており、欧米の経済学者の研究の対象範囲の広さに驚かされるでしょう。

1つ残念なのは本書のタイトルが「~衰退するのか」になっていることです。経済発展への希望よりも、衰退への恐怖が勝っている日本だからこそのタイトルでしょうが、本書の核心は経済発展を生む条件です。ぜひ、本書から日本人が衰退を避ける道ではなく、再び経済を発展させる条件について学び、実践してほしいと思います。