レベル4 ★★★

今世界で最も注目されている経済学者トマ・ピケティの弟子によるタックスヘイブンの解説書です。データが入手しづらいため、なかなか経済学者の分析の対象とならないタックスヘイブンですが、本書では世界中の資本と負債/資産の合計額の差を取るという巧妙な手法で、タックスヘイブンに蓄えられている富の額を推定し、タックスヘイブンにより失われている税収を推定しています。

格差を問題視するピケティの弟子で、フランス人の経済学者であるため、スイスやシンガポールを中心として、低税率国に対しては容赦ない批判を浴びせています。一方、フランスをはじめとした高税率国で政府が肥大化し、運営効率が悪くなる問題については全く指摘されていないことは、バランス悪く感じました。

もちろん、世界で最も富む企業や個人が、一般の起業や大衆よりはるかに低い税率しか適用されていないことは到底公平とはいえません。しかし、タックスヘイブンは既に世界の企業経営や金融市場と密接に組み込まれており、一方的に活動を制限すると実体経済に多大な影響が出てしまいます。

本書で提案されているタックスヘイブンの対抗策も、全世界での金融資産の所有者を全て名簿化することやタックスヘイブンへの送金や貿易に多額の税金を課すなど、実体経済への悪影響や手間の問題を考えると実現性があるとは思えないモノばかりです。本分の分量も100ページ強と少なく、あくまでタックスヘイブンに関する議論の入り口だけを提示したという印象を受けました。