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よくあるシリコンバレーの現状の紹介や起業論とは一線を画した、シリコンバレーを中心とした米国がなぜイノベーションを生み出したのか、100年以上前からの米国の社会構造や思想体系にその解を求める大ぶりな本です。

50年前に提唱されて以来、ずっと当てはまっているムーアの法則「18~24ヵ月で半導体の集積密度は倍になる」など、米国人の未来へのある意味無邪気ともいえる楽観的な姿勢が、様々な技術や社会制度の核心を生んで、未来の予測を自己成就させるというサイクルを生んでいるというのが本書の主張です。

個人的には、企業やMITとスタンフォードに代表される研究機関の性格が、東海岸と西海岸で大きく異なることについての説明が、他書にはない内容で興味深かったです。こうしたマクロ的な主張を裏付ける文化論などと同時に、ビル・ゲイツやウォーレン・バフェット、イーロン・マスク、ピーター・シールといった現在の米国経済を支える傑出した個人の人物像についてもよくまとまっています。

シリコンバレーを模倣しようとして失敗することは世界中でこれまで繰り返されてきています。次々と技術革新を生み出し、それが新規産業創出につながるという表面的なサイクルをまねしようとしても無理で、まずは本書にあるようなシリコンバレーを成功に導いている文化的、社会的背景まで深く理解する必要があるのでしょう。