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電気自動車(テスラ)/宇宙ロケット(スペースX)/太陽光発電(ソーラーシティ)と、民間企業が成功することが困難と考えられていた事業で、次々と世界的な成功をおさめ、スティーブ・ジョブズ亡き後にグローバルで最も注目されている起業家、イーロン・マスクの初めての公認伝記です。

マスクと同じペイパルマフィアのピーター・シールが「(21世紀に我々が期待していたのは)空飛ぶ自動車だったのに、手に入れたのは140文字(ツイッター)だった」と発言したように、金額的には急成長しているテック系のスタートアップも、技術的には革新性に乏しく、いかに広告のクリックレートをあげるのかなど、些末な技の巧拙を競っているだけだという声が、今のシリコンバレーを評して増えています。

その声に真っ向から反論するように、化石燃料への依存を抜本的に改善する電気自動車や太陽光発電、アポロ計画以来停滞している宇宙開発など、人類全体の課題解決に大きく資する骨太なトピックで次々とマスクは起業しています。そして、どの事業においても大成功を収めているマスクは、人類全体の可能性を感じさせてくれる稀有な存在です。マスクは南アフリカに生まれ、壮絶ないじめを経験しながらもたぐいまれな知的能力を発揮し、14歳の時に親族を頼って単身カナダに渡ります。その後、ペンシルバニア大学に進学し、スタンフォード大学の博士課程に進みますが、起業家となるためすぐに退学します。

兄弟と立ち上げた位置情報サービスの会社や、次に立ち上げたオンライン決済企業ペイパルの売却益で、数億ドルの資産を得ますが、マスクはそこで満足しません。学生時代から、人類の存続可能性を高めるために、輸送機器/宇宙開発/再生可能エネルギーの分野でのビジネスを手掛けたいと考えていて、その夢を形にするために上記の3社を起業します。骨太なトピックなだけに必要となる資金も膨大で、一時は破産寸前まで追い込まれながらも、なんとか成功に結び付けるプロセスは、本書に詳細な記述があり、その迫力に読み手としても震えました。

マスクを知る人は、彼のことを「ジョブズのセンスと、ゲイツの頭脳を合わせて、それをグレードアップした人物」と評しているようですが、ここまでの彼の歩みはそれを裏付けています。しかし、マスクは全く現状に満足しておらず、テスラでは世界にある全電池工場の生産キャパシティを1つの工場で上回るギガファクトリーという施設を立ち上げる予定ですし、スペースXでも宇宙ステーションへの荷物の運搬はあくまで1ステップで、最終的には火星への定期的な有人飛行を目的としています。

世界を巻き込みながら、自分の資産も時間もすべてをオールインして勝負し続けるマスクについて、ぜひ本書を通じて学んでみてください。