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このブログでは、基本的に資産運用やビジネスに関わる書籍しか取り扱いませんが、本書はかなり古いルポルタージュと異色です。本書を取り上げた理由は、「鼠たちの祭」という穀物の先物相場で世間をにぎわせた相場師たちについての短編が本書におさめられているからです。著者の沢木耕太郎氏はスポーツを中心としたルポルタージュに定評があり、スポーツ以外にもアジアを鉄道で旅した様子をまとめた「深夜特急」は、一時バックパッカーを中心としてカリスマ的な人気がありました。

「鼠たちの祭」には、1970年前後に世間をにぎわせた大物相場師たちが数多く登場します。現代ですら、日本においては投資家・ファンドマネージャーは異質な存在ですが、40年以上前ではいかに際物的存在であったかがよく分かります。ただ、それだけに純粋に相場を愛し、相場でしか生きられない男たちが集っていたことが分かります。当時とは金融市場の在り方も大きく変わっていますが、相場自体の人間の欲望と希望を表して鳴動するという本質は何ら変わっていないことも分かります。

この作品はシンガポールで交流している大物相場師から薦められたことがきっかけでした。本作品にも登場する相場師たちのことを良く知る人がいい作品だと薦めるだけあって、時代を超えて伝わってくる独特の迫力があります。「鼠たちの祭り」以外は、金融市場と何の関係もないですが、現代に通ずる社会の闇について考えさせられる作品ばかりです。本書で沢木氏の作品への関心が高まったので、まずは代表的な「敗れざる者」や「深夜特急」から読み進めていきたいと思います。