レベル3 ★★★

いやゆるFX本以外、為替についての書籍はあまりありませんが、本書は30年以上に渡って大手金融機関の一線で為替のトレーダーとして活躍してきた著者による本です。タイトルへの著者の回答は、「為替の相場の歴史が浅いから」というシンプルなものです。

数百年の価格推移の歴史がある株式や債券、不動産に対して、為替は本格的な変動相場に突入したのは1970年代以降の40年程であるという主張です。歴史が浅いために、PERやPBR、配当利回りのように定量的な割安・割高指標もあまりなく、トレーディングの一線でも勘に頼った取引が中心であるため、為替予測はそもそも困難だという主張には納得しました。

また、巷に出ている為替予測は、そもそも為替の本当のプロであるトレーダーからは全く参考にされていないということも繰り返し説明されています。著者はステートストリート銀行というカストディサービスで世界最大手の金融機関に努めていて、世界の大きな資金の流れを元にした社内の敏腕なクオンツ分析家たちによる予想の方がはるかに役立つという点にも納得です。

このようにプロですら、中々実態がつかめない為替の世界で個人投資家がレバレッジをかけて取引するFXの世界に絶対に足を踏み入れてはならないという著者の主張は、とても大切です。一部、ヘッジファンドのスキルをあまりに高く評価していたり、円キャリー取引の存在を否定したりと極端な主張もありますが、概ね個人投資家にも参考になる点が多い、為替についての貴重な好著といえるでしょう。