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今や世界でその社名を知らない者はほとんどいないインテルの創業当時からの現在までの歩みをまとめた、600ページ2段組の超大作です。本書の原題は”Intel Trinity”というタイトルで、インテルを作り上げた3人のリーダー(ロバート・ノイス、ゴードン・ムーア、アンディ・グローブ)をそれぞれ、キリスト教の三位一体における父(ノイス)、子供(グローブ)、精霊(ムーア)に例えて、どのようにインテルという世界最強の半導体メーカーが発展してきたのか、この3名を軸に網羅的にまとめられています。

この3人のキャリアは、そのまま人類が半導体をどのように生み出し、洗練させてきたのかと重なります。ノイスはIC(集積回路)を発明し、短命であったため惜しくも受賞を逃しましたが、ノイスとは別にICを発明し2000年にノーベル物理学賞を受賞したジャック・キルビーも認めたように、長生きしていれば確実にノーベル受賞者に名を連ねた天才科学者でした。リーダーとしても傑出していて、スティーブ・ジョブズのメンターとして知られ、80年代後半に日本企業の攻勢にさらされ、弱体化していた米国の半導体産業を復活させる旗印となったことは本書にも詳しいです。

ゴードン・ムーアも、提唱から40年経過するのに未だに当てはまり続けているムーアの法則「18~24ヵ月ごとに集積回路に搭載されるトランジスタの数は倍になる」で、これからも人類の文明が続く限りその名が残る偉大な科学者です。また、トリニティにおける精霊に例えられるように、人格者としても高く評価されています。

そして最後のアンディ・グローブは第二次大戦下のハンガリーにユダヤ人として生まれ、数々の迫害を逃げ延びながら米国にたどり着き、ノイスとムーアと出会ってインテルに創業時から在籍し、CEOを長く勤めてインテルを一ベンチャーから世界最高の半導体メーカーに育て上げるというこちらも傑出した人生を歩みました。

著者は1970年代から長くシリコンバレーで活躍するジャーナリストで、インテルを軸にここ50年近くのシリコンバレーの発展ぶりが詳細に把握できる稀有な作品に仕上がっています。インテルのトリニティが居なければ、現在のアップルもグーグルもフェイスブックも今の形とはなっておらず、シリコンバレーはもちろん広く全世界がこの3名の影響を強く受けています。シリコンバレーのベンチャーを継続的に生み出す力、引いては米国経済を世界最強足らしめている原動力とはどのようなものか知りたい方には必読の素晴らしい著作です。