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冷戦後、唯一の超大国となって久しい米国ですが、今後世界をリードしていく中でどのような政治的な立ち位置があり得るのか、大胆な予測とその的中率で知られる著名な政治学者イアン・ブレマーが3つの現実的な選択肢を提示して、議論が展開されています。

その3つの選択肢はできる限り対外的な軍事的干渉を制限して国内にリソースを集中する「独立するアメリカ」と、経済的効率性から外交政策を判断する「マネーボール」、さらには対外的に積極的な働きかけをする「必要不可欠なアメリカ」の3つです。

そして、著者が本書の結論部分で次期大統領に薦めるのが「独立するアメリカ」です。「マネーボール」には米国の国家としてのビジョンをお金で換算してしまうことのデメリットが大きいこと、そして「必要不可欠なアメリカ」は聞こえがいいものの、米国の世界的なプレゼンスをその地位までもっていくにはあまりに人的・経済的リスクが大きいことがマイナス要因として挙げられています。

上記2つの方針よりも、米国国内にリソースを集中することで、米国が理想とする国家のビジョンを体現することが、現在の米国のプレゼンスを踏まえた最も現実的かつ効率的なやり方であると著者は主張しています。次期大統領の最有力候補であるヒラリー・クリントンの外交施策に対する主張と共通するところが多く、著者の主張はとてもリアルに感じられました。

一方、同盟国である米国に安全保障の大部分をこれまで依存してきた日本にとっては「独立するアメリカ」という選択肢は厳しいモノでしょう。安全保障問題に関する老舗シンクタンクであるランド研究所からも、日中が尖閣諸島を巡って衝突した場合に米国は積極的な関与をせず、結果わずか5日で中国が勝つというレポートが先日出されましたが、これも「独立するアメリカ」の現実性と日本へのネガティブな影響を推測する上で大きな意味を持つ内容です。

米国の傘の下というこれまでの安全保障の前提が変化したときに、日本にどれだけ自前のリソースで安全保障問題に対する有効な手立てを打ち出せるのか、甚だ不安に感じます。