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何年にもわたる紆余曲折を経て、台湾のホンハイに買収されることになったシャープですが、そのシャープが弱小メーカーから液晶を軸に大手電機メーカーにまで飛躍する礎を作った人物に焦点をあてたドキュメンタリーです。

その人物とは佐々木正氏で、御年101歳で今も健在です。佐々木氏は第2次大戦中に軍の兵器開発に従事するエンジニアでしたが、戦後にGHQからの命令で通信機器の開発に身を投じます。米国に渡って半導体を開発してノーベル物理学賞を受賞したウィリアム・ショックレー氏らと交流して、多くの功績を残します。佐々木氏の力量にほれ込んだシャープの創業者である早川徳次氏から猛烈な誘いを受けてまだ電器メーカーとして弱小だったシャープ(当時早川電機工業)に入社します。シャープでも電卓や液晶、太陽電池など、米国との太い人脈を活かしてシャープが総合電機メーカーとして躍進していく原動力となります。

ただ、佐々木氏の功績はシャープでの活動にとどまりません。本書でも紹介されているように、シャープのライバルだったソニーやパナソニックの創業者である井深大氏や松下幸之助氏にもアドバイスをしたり、はるか年下であるスティーブ・ジョブズ氏や孫正義氏のメンターとなったりもしました。

特に、孫氏に対しては創業期に個人保証で融資を受けられるようにまでしたり、まだ実績がほとんどないにもかかわらず研究開発費をシャープから出したりするなど、多大なサポートをして未だに孫氏は佐々木氏が居なければ今の成功はなかったと毎年感謝の席を設けているほどです。

佐々木氏のこの敵味方分け隔てなくサポートする姿勢は早川氏の姿勢に見習ったもので、「共創」というフレーズで本人はこのスタイルを表現しています。佐々木氏が去った後のシャープが凋落し、ついには海外企業に救済されまでに至ったことの背景には、この共創の精神の欠如があったと、本書を読んだ多くの人が感じるでしょう。