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ノーベル物理学賞受賞者であるスティーブン・ワインバーグ氏の著作というと、物理学の研究の最前線について解説したものと思う人も多いでしょうが、はるか紀元前からの科学研究についての歩みをまとめた科学史です。

そして、本書の冒頭にあるように、科学史をまとめる上で変則的な手法を用いています。それは、歴史について記述する際は時代ごとの常識に沿ってまとめるのが一般的であるのに対して、本書は現代科学の視点から古代を含めて科学研究について論評するというスタイルです。当然ながら、現代科学の常識に照らし合わせると古代はもちろん、ルネッサンス期の科学革命時代の研究も色々と瑕疵があります。そして、本書ではそうした瑕疵が遠慮なく指摘されています。

では、本書は当たり前と言える昔の科学研究の不備をあげつらうニヒルな内容で、読後感が悪いものかというと全くそうではありません。むしろ、厳密な歴史学の手法に沿った科学史よりも、本書の方が一般の読者にとっては時代ごとの科学研究のスタイルの差異が明確になって学びが大きいでしょう。

もちろん、科学史を専門とする人からは色々と言いたいことがあると思います。しかし、時代ごとの科学研究の前提を知らない一般読者からすると、古代ギリシャの科学研究は現代科学と全く異なっていてその成果について過大評価であるとか、ルネッサンス期においても科学と宗教が不可分な存在であったとか、率直な感想を持ちました。

客観性を保ち、普遍性を獲得している現代科学の洗練された手法が、いかに長い時間をかけて苦難の連続を乗り越えて奇跡的に得られたのか、本書を読むことで感動する人も多いでしょう。現代では当たり前すぎる存在となった科学の成り立ちについて知りたい方にはとてもオススメです。