レベル3 ★★★

人工知能が第3次ブームを迎えて、メディアでもこのワードを見ない日はありませんが、金融業界においてもアルゴリズム取引の増加など人工知能の影響についても関心が高まっています。本書はタイトルだけ見るとキャッチーなタームをちりばめて、人工知能ブームに乗ろうとした本のようにも見えますが、内容はしっかりとしています。

著者は邦銀でトレーディングの一線に長くいた方なので、歴史的に金融業界が現在人工知能と呼ばれている様々なテクノロジーを利用してきたことについて精通していて、歴史的な経緯から最新の情勢まで詳しくまとめられています。

特に、米国のルネッサンス・テクノロジーズやブリッジウォーター・アソシエイツ、シタデルといった米国の巨大ヘッジファンドが、どのように最新の機械学習やディープラーニングに代表される人工知能分野のテクノロジーについて取り組んでいるのかの事例については私も知らないことがあり有用でした。

著者は本書の中で繰り返し、このままでは先行している上記のような米国の巨大ファンドが洗練された人工知能分野の金融テクノロジーを独占してしまい、日本を始めとした他国の金融機関や個人は搾取される一方になる可能性があることを指摘しています。

金融業の歴史が始まってから最も破壊力のあるテクノロジーと言える現在の人工知能に関わる技術が今後どのように金融業界、ひいては社会全体にインパクトを与えるのか、関心がある方は議論のスタートとして必要な知識がコンパクトにまとまった良書です。