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またまた人工知能の本を取り上げますが、ここまで紹介してきた一連の人工知能本と本書は趣が異なります。それは、ここまでの本が人工知能の進化の凄さと将来の可能性にフォーカスしているのに対して、本書は安易な人工知能に対する期待を戒める内容となっているからです。

本書の著者の西垣氏は、私の大学院時代の恩師です。私が通った大学院である東京大学の学際情報学府は文字通り、文理の垣根を超えて学際的に情報に関する学ぶという野心的な目標を掲げて新設された大学院でした。西垣氏はこの大学院において目玉の研究者で、実際に彼の授業は分野を縦横に、最新の情報学に関するトピックが繰り広げられてとても刺激的な内容だったことを記憶しています。

本書を読んで、西垣氏の舌鋒鋭い評論が全く衰えていないことを知ってとてもうれしく感じました。西垣氏は現在3回目のブームを迎えている人工知能について、約30年前の前回のブームの際に世界の先端を行っていたスタンフォード大学で研究していました。前回の人工知能ブームはエキスパートシステムに代表される知識群をコンピュータに付与することで、人工知能に専門家を代替させることを目指しましたが大失敗に終わりました。

そして、西垣氏は現在の3回目のブームでもてはやされているディープラーニングやシンギュラリティに同じ危うさを感じています。人工知能ブームに乗って斬新さや奇抜さにフォーカスを当てた情報発信ばかりが注目をされるので、上記の用語とともに人工知能の発展の本質が誤って理解されている現状を著者は強く憂いています。

もちろん、人工知能の発展とその可能性を否定するのではなく、ビッグデータと昨今の人工知能のテクノロジーの進化でどのような成果が期待され、社会の構成員としてどのようにその成果を受け止め、正しく使っていくのかについての心構えが丁寧に解説されています。安易な人工知能本に辟易している人は、本書でフラットな視点を手に入れてから自分の思考をまとめていくことがオススメです。