カテゴリー: 投資全般

まぐれ

レベル3 ★★★

「ブラック・スワン」が大ベストセラーとなった著者が、「ブラック・スワン」の前に書いた作品です。個人的には、同じ内容の繰り返しが多い「ブラック・スワン」より、こちらの方が楽しめました。

著者の主張は、両書とも共通しています。人は株式市場において、経済学が想定しているように合理的ではなく、感情で動くので、値動きは正規分布ではなく、ベキ分布に従うということです。

もう少し分かりやすく言うと、正規分布では何十億年に1回しか起きないとされている異常値=ブラック・スワン(株式市場では大暴落や超高騰)が、ベキ分布でははるかに頻繁に10年に1度程度起きるという違いがあります。

どちらが正しいかは、ノーベル経済学賞の受賞者マイロン・ショールズのファンドが、ロシア危機に続いてサブプライム危機においても破たんしているのに対して、著者のファンドは大暴落の度に巨額のリターンをあげていることからも明らかです。

著者はヘッジファンドを所有しながら、応用数学の研究所も運営しています。経済的豊かさと知的満足度を両立する、最高にあこがれる生活です。この余裕ある生活から、「まぐれ」のような面白い本が生まれるのでしょう。

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敗者のゲーム

レベル1 ★★★

米国の投資コンサルタントの第1人者である著者が、投資に勝つ心得をわかりやすく解説しています。その心得とは、本書のタイトルにあるように、市場平均リターンに勝つという「勝者のゲーム」を行うのではなく、市場平均をなるべく低いコストで達成するという「敗者(にならない為)のゲーム」に徹するべきという内容です。

市場には、「勝者のゲーム」を追求すべきという本であふれています。それは当然で、勝者を目指して売買を繰り返したり、新しい商品への切り替えを行ったりすることが、それらを販売している金融機関のもうけにつながるからです。また、「勝者のゲーム」を目指す作業は、自分の直観を信じて意思決定を行うことの楽しさや、自分自身や運用を任している人のスキルを過大評価しがちであるという、人間の本性にうったえかけるので、どうしてもその魅力にあらがえない人が多いのも仕方ありません。

しかし、投資で成功するには、自分で長期的な目標を考え抜き、その達成に必要な作業、それは往々にして非常に地味で忍耐がいる作業ですが、それを継続するしかないと著者は繰り返し主張しています。その考えは、私たちがセミナーで解説している理念と共通するものです。

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10万年の世界経済史

★★★

産業革命がおこるまで人類の経済はマルサスの罠、つまり1人あたりの所得が増えないため人口が多くなればみな貧しくなり、逆もまたしかりというジレンマに、人類は10万年もの間、捕らわれてきたという事実が解説されています。

マルサスの罠にとらわれた経済においては、全ての評価が今とは180度逆でした。人口を増やすような政策である福祉、衛生改善、医療保障などは人口を増やして人々を貧しくし、子供の間引き、不潔な衛生環境、老人の高い死亡率は人々を豊かにしたのです。

産業革命が日本で起きなかった理由の1つとして、江戸は当時の世界基準から見て非常に良好な衛生環境により人口が多く、所得が低く抑えられていたという事実があげられています。では、なぜ英国で産業革命が起きたのか。

都市における不潔な衛生環境、富裕層ほど出生率が高く上流階級のモラルが社会に広がった、アメリカによる食糧供給の改善等ありますが、他の欧州諸国も同じ条件で最も大きな理由は別のところにあると指摘されています。

産業革命からわずか200年で1人あたりの所得は60倍にまで成長しました。21世紀においても世界経済が成長を継続できるかについて貴重な視座を提供してくれる本です。

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たまたま –日常に潜む「偶然」を科学する

★★★

日常生活に偶然の要素がいかに大きいのかが分かりやすく解説されています。そして、多くの人が、物事の結果を個人の実力によるものと結論付けて、偶然の要素を過小評価しているかが良く分かります。

また、この本では人間が確率というものを判断する上で間違いをおかしやすいかについても多くのページが割かれています。数学者や医者であっても確率で間違いを犯してしまうことが、「1,000件 に1件しか間違いがない程正確なHIV検査で、異性愛者の白人男性が陽性になったとしても、実際に感染している確率は10%程度。でも、医者も保険会社も陽性であれば99.9%病気 であると誤認してしまい、たった1回の検査結果で保険に入れなくなった」といった様々な例から解説されています。

では、偶然の要素が大きい人生で努力しても無駄であるということが本書の結論なのでしょうか。著者は、「表が非常に出づらいコインであっても、何百回、何千回もコインを投げ続ければ、何回目に表が出るかは運次第だが、最後にはいつか表が出る」という言葉で努力の重要性につい て語っています。

私たちも成功してもそれが全て自分の実力とは過信せずに、謙虚な気持ちで努力することを継続していきたいと思いました。

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新賢明なる投資家

レベル2 ★★★

初版の「賢明なる投資家」が書かれたのは何と今から60年以上前の1949年です。しかし、書かれている内容は全く色褪せることがありません。本書が出版された当時は、大恐慌により株式市場が傷ついたままで、株式=ギャンブルと見なされていました。それを、知的な人間がその思考力を駆使してリターンを得る場まで、昇華させるきっかけとなったのが本書でした。

値動きに惑わされず、株式を企業の所有権の一部として本質的価値を見極め、価格がその価値を下回る時にのみ購入するというバリュー投資のスタイルは、この本により初めて世に生み出されました。周囲が熱狂している時も、絶望している時も常に冷静に本質的な価値を見極め、株価が正当なレベルまで戻した時に売るという姿勢は、マーケットで長期的に成功する上で不可欠な姿勢です。

グレアムの一番弟子のバフェットによる巻末の補遺も秀逸です。経済学者のお偉いさんで効率的な市場なる幻想を信じている人たちは、マーケット平均を長期的に上回ることは不可能だと言っています。しかし、グレアムの弟子たちの中から4人も、10年以上の長期に渡って年率でS&Pのリターンを7%以上上回る実績を残しているという強烈な反証が示されています。

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ブラック・スワン -不確実性とリスクの本質

レベル3 ★★★

黒い白鳥(ブラック・スワン)が発見されるまで、誰もがスワンは白いものだと信じていたように、金融市場においても誰もが想像しないとんでもないことが起きる。本書はサブプライム危機を予言した書物として、世界中で大ブームを巻き起こしました。

金融工学の大前提、正規分布が金融市場に当てはまらないというのが著者の一貫した指摘です。金融工学と著者の指摘のどちらが正しいか、ノーベル経済学賞を受賞し、かつ金融工学が隆盛するきっかけ、ブラック・ショールズ方程式を考案したマイロン・ショールズと本書の著者が運用しているファンドのパフォーマンスを比較してみましょう。

ショールズのファンドは、最初のLTCMがロシア危機により破たんし、その後に設立した2つ目のファンドも2008年のリーマンショック時に40%近くのロスを出し解散してしまいました。

一方、著者が関与したファンドは、金融工学では予測不能な大暴落が必ず起きるという見立てにより、超優良株のアウトオブザマネーのプットオプションを安価で大量に仕込み、暴落した時にその価値が何十倍にも跳ね上がることで、ITバブル崩壊や金融危機などの暴落相場のたびに巨額のリターンをあげています。

ノーベル賞を取っていようと結果で裁かれる金融市場は、非常に公平であるとともに厳しい世界であると本書を読んで再認識しました。

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