メイクマネー

★★★

1980年代に当時世界の頂点にいた投資銀行ソロモン・ブラザーズに就職し、長くトレーダーとして活躍した人物の回顧録です。

10年以上前に出版されていますが、今読んでもなかなか興味深い内容です。個人的には自分が経験していない1980年代後半の国内マーケットの異常な過熱ぶりと、一転して下落一色となった90年代の国内相場で外資系の投資銀行がどのように稼いでいたのかが、最も興味をひかれたポイントでした。

著者は、ソロモンがトレーダーの楽園から、複雑な政治が横行する巨大組織となる過程で息苦しさを感じ、30代半ばで引退をしてしまいます。その後はどのように生活しているかは知らないのですが、一度マーケットの刺激にどっぷりとつかった人物が、金融市場とは無縁の生活を送ることができるのか知りたいところです。

80年代のソロモンには、その後世界最大級のヘッジファンドLTCM (ロング・ターム・キャピタル・マネジメント)を創設し、数年間素晴らしいパフォーマンスを残した後に金融恐慌を引き起こしかねないほどの破たんに終わるという、ローラーコースターのような人生を歩んだアービトラージトレードの開祖ジョン・メリウェザーや、マネックス証券を創設した松本大氏など、多士済々でした。

同じように、若いころから金融の世界で生きてきているので、10年後、15年後に自分も含めてどのようになっているのかと、考えずにはいられません。ただ、一つ言えるのは本書にもあるように、マーケットは過度の楽観と悲観を繰り返し、多くの悲喜劇を生み出していくであろうことです。

こうした金融の世界の人の回顧録は、巨大な自尊心で歪められがちですが、本書は筆者の性格から淡々とした筆致で非常に読みやすく仕上がっています。金融業界で働くことを考えている若い人は読まれることをオススメします。

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国家は破たんする

レベル1 ★★★★

過去700年以上にわたる信用不安、金融危機を調べあげた超大作です。日本語版は600ページ以上ですが、そのうち200ページが過去の危機の事例紹介で、書籍としてはもちろん、データ集としても有用です。

原著のタイトルも秀逸で、“This Time is Different(今回はちがう)”という、人類が何度も同様の財政破たんや経済危機を繰り返してきた理由の本質を説いたものとなっています。2007年以降のサブプライム危機もまさにそうですが、一見バブルに見えるけれども金融工学の発達により昔とは異なるというように、人間は常に「今回はちがう」と錯覚しがちで、でも必ず最後には悲劇的な結末に至るということが、圧倒的な量の歴史的事実からいやというほど思い知らされます。

本書は、金融危機前から準備されていたものですが、金融危機の深刻化により俄然注目を浴びました。何より興味深いことは、サブプライム危機の発生前後のGDP成長率、株価の推移、住宅価格の推移が、過去の危機のパターンと酷似していることです。

グローバル化が進もうとも、金融工学がいくら発達しようとも、経済の根幹をなす人間の本質は全く変わらず、新たに悲劇的な経済史の1ページを作ってしまったことがよく分かります。

今までほとんど調査されることのなかった19世紀以前の経済危機や、国内債務による信用不安についても徹底して調査したことで、本書は他に類を見ない、国家財政の人類史となっています。

折しも、未曾有の国家債務がつみあがる中、「先進国だから」、「ほとんどの債務が国内で消化されているから」などと、稚拙な「今回はちがう」という論理がはびこっている日本にとって、本書は重大な警告を発してくれます。

一点だけ残念に感じたポイントは、本書の中でも第二次大戦後には先進国は国家破たんから卒業したと書かれていることです。2012年のギリシャ国債のデフォルトでこのことは明確に否定され、さらにスペイン・イタリアにおいてもデフォルトが発生するかもしれないところまで、欧州の危機は発展しています。

このような名著をまとめ上げ、過去の歴史に通じたきわめて優秀な学者であっても、「今回はちがう」と先進国の国家破たんについて思いこんでしまったことから、国家財政という問題がいかに個人には想像が及びづらい複雑なものかを思い知らせてくれます。

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ブーメラン

★★★

米国のノンフィクション作家として右に出る者がいないと言えるマイケル・ルイスの最新作。一昨年に出版されたベストセラー「世紀の空売り」はサブプライム危機の発生を読み、莫大な資金を稼いだファンドマネージャーについて書かれた作品でしたが、「ブーメラン」はその続編で、サブプライム危機が欧州に飛び火し、深刻な事態となっているアイスランドやギリシャなどの重債務国についての作品です。

アイスランドは、銀行がヘッジファンドのように世界中の資産を買い集め、手を広げ過ぎた挙句、国家が破綻し、通貨は紙くずと化しました。ギリシャは、過激な運用には手をだしていませんでしたが、ユーロに加盟するために国の財政を粉飾した上に、怠慢な国民性が重なり、現在の財政危機を招きました。

アイスランドは、2003年にアメリカからやってきた投資銀行家によって、漁師たちの国から、銀行や投資家が巨額の借金をしたうえで、世界中の買いあさる金融国に変貌します。

2007年にかけての3年半で、アイスランドの株価は9倍に膨れ上がり、不動産価格は3倍になりましたが、米国でのサブプライム危機の発生によりバブルは崩壊し、2008年10月にアイスランドという国家は事実上、破綻してしまいます。さらに株価も85%の大暴落を起こし、不動産価格も急落したことで海外から調達した借金の大部分は返せなくなり、財政破たん後には国民1人あたり3,000万円近くの借金をかかえることとなりました。

一方のギリシャは、国民の4分の1が公務員で、公務員が民間企業の約3倍の給料をもらっていました。人々は日常的にわいろを受け取り、脱税をし、さらに退職年齢は男性が55歳、女性が50歳であった上に、現役時の収入の8割近くの手厚い年金も受け取っていました。

他にも、アイルランドの経済危機や、こうした重債務国の救済に奔走するドイツなど、欧州各国の混乱ぶりが次々と暴かれます。本書を読むと、欧州危機の根が深刻で、簡単には解決できないと理解できるでしょう。

そして、サブプライム危機と欧州危機を共に予言した敏腕ヘッジファンドマネージャーが、次に財政破たんを予測している国は日本とフランスであることも明かされます。マイケル・ルイスの著作の割には、話の展開に一貫性がなく場当たり的な描写も多いので、星3つと評価しましたが、日本の信用不安が気になる人は読んで損のない良作です。

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市場リスク 暴落は必然か

市場リスク 暴落は必然か

レベル3 ★★★★

モルガンスタンレー、ソロモンブラザーズ、シティ、ムーア・キャピタルなど、金融の最前線で、主にリスク管理を担当していた筆者が書いた「市場の危機の根源」に関する大作です。

一般の人が金融情報を取得するのが難しかった70年代半ばの投資銀行では、M&Aアドバイザリーや社債の販売など、人脈や情報力で利益を上げていました。80年代に入ると、筆者のような経済、数学、物理学などの博士号を取得した優秀な人が、ウォール街にやってきて、手腕を発揮し始めます。著者はちょうどその頃に学会からクオンツ部門に就職をしました。

著者が携わっていたポートフォリオインシュランス部門は、資産をS&P500の先物などで自動的にヘッジをし、値下がりリスクを抑える手法を販売していました。このポートフォリオインシュランスは、リスクを計算するという当時画期的な手法であり、瞬く間に機関投資家に普及しました。その後に起きたブラックマンデーの下落で、自動売りプログラムが発動し、売りが売りを呼んで大きな下落につながります。

90年代前半までは、コンピューターの性能の向上によるクオンツ分野の活躍や、米国の株式/不動産の好調もあり、投資銀行の収益は拡大していきました。ソロモンが得意としたのは、モーゲージ債の金利スワップや先物を使ったアビトラージ戦略です。ロングタームキャピタルマネジメントは、様々な国の金利の高い債券に対して、相関モデルを使ったヘッジを行い、レバレッジをかけて世界中で取引を拡大し、大きな収益を上げます。

90年代後半にかけて、アジア危機などが起きて、世界中でリスク許容度が低下し、ソロモンやロングタームキャピタルマネジメントの崩壊へとつながります。その予兆は数か月前から出ていたのにもかかわらず、モデルが複雑すぎて、その原因を見つけるのに時間がかかってしまい損失額が大きくなりました。

2000年代は、ヘッジファンドの全盛期が訪れますが、著者もコンピューターモデルを駆使したヘッジファンドに移籍します。これまでの投資銀行は、株式/債券など決められた取引しかできませんでした。一方、ヘッジファンドはあらゆる投資商品や戦略など多岐に渡った複雑なモデルで運用をし始めます。モメンタムにかけるといったギャンブル思考が強い自己勘定部門の手法に比べ、ヘッジファンドでは、洗礼されたコンピューター分析を元にした短期的なサヤどり売買がさかんになされます。さらに、ロングショートやマクロ取引など新しい手法が開発されました。

このように複雑化した金融業界のリスク管理の方法として、スリーマイル島の事故を例に挙げて説明しています。スリーマイル島の原子力事故では、おびただしい数の制御弁が多数の動作表示ランプで監視されていました。事故の発端は動作表示ランプがたった一つ故障したことで発生しました。この事故に、通常なら問題にならないような点検時の人為的なエラーが重なり、かつ750個に近い数の警報ランプから、問題を見つけ出すことに時間がかかり、大事故につながりました。

一つ一つのミスは、大きな事故につながるようなミスではなくても、ノーマルミスが積み重なると、大きな事故が起こる確率が高まります。その対処法として、あまり複雑ではないリスク管理が最善の方法だと解説しています。

金融機関での大きな損失は、日常のノーマルアクシデントの積み重なりで起きており、往々にして組織のミスがその損失を大きくしていると指摘しています。ノーマルアクシデントが起きた場合は、統制が整えられた組織内でそのミスを共有し、再発を防ぐことが大切です。ノーマルアクシデントが再発するような職場では、再発を防ぐために、よりシステムを複雑にしていくとそれはいつか予想外の出来事が起こる可能性が高まってしまうので逆効果です。

各時代の最先端の投資戦略とリスク管理の難しさについて学ぶことができ勉強になりました。また、自分達がファンドを立ち上げた際には、投資モデルを考えると同時に、日頃からシンプルなリスク管理を組織内で徹底して行いたいと思います。

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ブラックストーン

レベル3 ★★★★

運用総額が世界最大規模のオータナティブ・ファンド (ヘッジファンド・PEファンドなど)であるブラックストーンの創業期から今日までを非常に詳細に解説しています。

私も以前に働いていたPEファンドは、日本では「ハゲタカ」の名で有名になったように、いきなり会社に株主として乗り込んできて、リストラなどを行い、濡れ手で粟のビジネスだというイメージが根強くのこっています。

米国でも物議を醸すことがあるPEファンドですが、本書ではブラックストーンが手掛けてきたさまざまな投資案件を長期的に分析することで、彼らのビジネスが世の中のイメージとは異なり、企業が成長し雇用を増やすことにつながっていることを明らかにしています。

リーマンショック後に、日本でのPEファンドビジネスは苦戦を強いられていますが、本家の米国ではブラックストーンなど最大手のファンドは規模を拡大しています。業界で働いていた人間として彼我の差はどこから来るのかという視点からも非常に興味深かったのですが、私が感じた1番大きなポイントはビジネスの多様性です。

ブラックストーンは、初期はPEファンド専業としてスタートしたのですが、債券投資専門の部隊を立ち上げ、その部隊は今では独立し、ブラックロックという世界最大の金融機関にまで成長しています。

他にも、不動産投資や複数のヘッジファンドを選定して運用するファンド・オブ・ファンズなど、様々な事業を展開しています。冒頭でブラックストーンをPEファンドではなく、オータナティブ・ファンドと呼んだのは、この事業分野の広さからです。

もちろん、彼らも今日の成功までには様々な失敗を経験してきています。ただ、その失敗から学び、PEファンドが経営再生能力を過大視しがちでそれが失敗案件につながること、市況の底で割安に投資をすることが成功への最大の近道であることなど類型パターンを見つけ出し、それを忠実に実践した事が最大最強のファンドにまで成長した礎となりました。

オータナティブ・ファンドビジネスは、今後も新興国への進出などさらなる成長を遂げていくでしょう。また、共和党の有力な大統領候補者であるミット・ロムニーも、大手PEファンド、ベインキャピタルの創業者です。

グローバル社会における経済面はもちろん、政治面においても影響力を高めていくであること必須のオータナティブ・ファンドについて詳しく知りたい人はぜひ読んでみてください。

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アニマルスピリット

★★★

ノーベル経済学賞を受賞したジョージ・アカロフと、イェール大学の経済学部教授ロバート・シラーという気鋭の経済学者による、主流マクロ経済学の限界について解説した書物です。

題名にあるように、マクロ経済学の主流派が想定している合理的な判断ではなく、人はアニマルスピリッツに従って行動する局面が多々あり、このことにより経済学が想定していない事象が発生するというのが彼らの主張です。株価や住宅の値動きの激しさや、黒人の貧困層が継続的に多くなっている理由の背景には、全てこのアニマルスピリッツがあるという説明が展開されています。

そして、このアニマルスピリッツの典型として、インフレを正しく認識でない貨幣についての錯覚や、公平さについてのこだわり、物語を過剰に重視する思考パターンなどがあることも説明されています。

私のようなビジネスをやっている人間からするとこうした指摘は当然のようにも聞こえるのですが、経済学の主流派がこうしたアニマルスピリッツを無視して、理論的には美しくとも、実態とはかけ離れた理論体系を打ち立てている事には危うさを覚えます。

こうした経済学の限界を如実に表わしたサブプライム危機をきっかけに、著者たちは経済学にアニマルスピリッツの側面を織り込まなければならないと強く主張しています。著者たちの声かけが大きな流れとなって、より実践にたえうる経済学が発展することを期待したいと思います。

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自由市場の終焉

★★★

米国の様々な権威ある書評で、経済に関する2010年の年間ベスト図書に選ばれた本書は、イアン・ブレマーというスタンフォード大学で博士号を取得した後に、史上最年少の25歳で著名なシンクタンク「フーバー研究所」のフェローに就任した、絵に描いたようエリートである人物によって書かれています。

ここ20年で資本主義はあまねく地球上に普及したけれども、その資本主義には、欧米や日本に代表される自由資本主義と、中国・ロシア・ペルシャ湾岸諸国に代表される国家資本主義に大別されるというのがこの本の論旨です。

個々人の自己実現の最大化を目標とする自由資本主義に対して、国家の安定と繁栄を最大の目的にするのが国家資本主義です。そして、2008年の金融危機による先進国経済の失速で、国家資本主義が勢いを増していて、このままであれば、主流となるほどの力を持ちかねないという分析がされています。

ただ、長期的に社会の発展に資するのは、イノベーションを生む自由資本主義で、先進各国は極端な格差の進行や大規模な経済危機の発生を防止しながら、この自由資本主義を実践していかなければならないというのが本書の一貫した主張です。

EUが2010年以降の債務危機において、ユーロ圏を維持し更なる統合を進め、ヒト・モノ・カネ・サービスの障壁なき交流を推し進められるかには、自由資本主義全体のすう勢がかかっています。

日本も、従来のモノの貿易だけでなく、ヒト・カネ・サービスに渡る広範な経済協定であるTPPにとう向き合っていくのかは、自由資本主義の担い手として世界から注目が集まっている事を理解しなければなりません。

普段はこうした長期のトレンドを意識することは少ないでしょうが、今や個人投資家も世界中の経済システムから影響を受けることを理解して、こうした大局的な分析についても理解を深めるようにしてください。

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ヘッジファンドマネージャーのウォール街の日々

レベル3 ★★★★

アメリカ人にはたまに居るのですが、イェール大学のアイスホッケー部主将で、NHL選手を目指すほどのアイスホッケーのプレイヤーでありながら、ウォール街で頭角を表わし、敏腕ヘッジファンドマネージャーとして20代から年収数十億円を稼いでいたという、まさに文武両道である著者が書いたエッセイです。

この本を読んで私が共感したのは、彼が起業して現在も経営を続けている会社が、独立系の投資情報発信会社であることです。そのサービス内容は非常に優れていて、サブプライム危機からの2009年前半までの株式の低迷と、2009年後半からの回復を言い当て、大きなヘッジファンドなど投資のプロ中のプロが顧客となっているようです。もちろん、うちの会社はそうしたレベルにまでは到底至っていませんが、独立系でもこうした企業がある事を知り、しかも創業者が30代であることから、ロールモデルとしたいと本書を読んで思いました。

彼の経歴で同じく共感したのは、2007年後半からバブルの崩壊を予想していたにもかかわらず、3ヶ月といった短い尺度での成果しか評価されない彼が働いていたヘッジファンドの姿勢により、彼の提言は受け入れられず、最終的にはクビになってしまったことで、人に左右されずに意見を発信できる金融情報会社を自分で作ったことです。

私も、まさに金融バブルとそのバブルが崩壊する過程をファンドの中で経験し、いかに組織の中の1人として、組織全体の動向に無力であるかを実感した事が、独立したきっかけの1つでしたので、彼のキャリアパスには非常に共感できます。

ただ、彼は20代で巨万の富を築き、上記にように起業した会社も大きな規模にまで成長させ、かつ顧客基盤も素晴らしいものにしています。私も少しでも追いつけるように頑張りたいと思います。同時に、アメリカの金融業界には若くして大きな成功をおさめている人がごろごろしていて、目線が下がらなくて良いなとも感じました。

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バフェットとグレアムとぼく

レベル3 ★★★

偉大な投資家である父とおじから話を聞き、ウォーレン・バフェットと投資に興味を持つようになった、13歳のインド人中学生が書いた投資入門書です。可愛らしいタイトルと表紙で専門的な投資本とは期待していなかったのですが、「良い投資をするためには、財務諸表のEBITDA、ROCEの数字を見る」など、内容は本格的です。

バフェットの投資哲学と手法についてもそのエッセンスを余すことなく紹介しています。率直な表現でシンプルに投資について解説しているのが印象的で、株式投資について勉強したい女性の方にもオススメの本です。インド人には若くて優秀な人が多いとは聞いていましたが、中学生が沢山の投資本を読み込み、偉大な投資家から成功した秘訣を聞いて学び、「投資とビジネスで成功する」という夢に向かって着実にすすんでいる姿に感服します。

著者のアリャマン君は、インド財閥のご子息として生まれ、父親やおじから投資について学べる恵まれた環境にあったことが大きいですが、米国では小さい頃から投資について学ぶ授業があるなど、投資の教育環境は非常に充実しています。

日本でも、小さいころから投資について体系立てて考え、かつ主体的に行動できる力を養うような教育機会を増やすべきではないでしょうか。そして、「○○円儲かる」といったハウツー本ではなく、投資の哲学や本質について学べるような本を私たちも継続的に出版していきたいと強く思いました。

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大いなる不安定

レベル3 ★★★

金融危機を予測していたことで、世界的に名をあげたヌリエル・ルービニ教授の著作です。後付けで危機が起きることは分かっていたと言っている「自称危機の予想家」と違い、質の悪いCDSなど複雑なデリバティブ商品と、金融機関の高レバレッジ化により、世界的な金融機関が何社か破たんに追い込まれると、2005年の段階から的確に予測していたルービニ教授の深い議論が堪能できます。

前半は、2007~08年に掛けての金融危機の展開と、政府・中央銀行の対応が時系列でよくまとまっています。前回の金融危機を、漠然とサブプライムローンが原因とか、リーマン・ブラザーズを破たんさせたことが悪かったと理解している人は、危機の本質を理解する目的でも本書を読んでみてください。

後半では、金融危機を今後も頻発させないための様々な提言がなされています。IMF・世界銀行への新興国の発言権の拡大、金融機関の報酬制度の改定、金融機関の自己資本規制、大きすぎる金融機関の解体、監督機関の集約など提言は多岐にわたります。そして、こうした様々な改善提案が、グローバル金融時代において危機の再発を防ぐには不可欠であることを、経済・金融知識の少ない人にも理解できるように分かりやすく解説されています。

こうした書籍を読むと、いつも感じるのは米国の経済論客の質の高さと、人材の厚みです。前回の金融危機への理解もなく、感情的にグローバル金融を批判したり、社会を発展させる気概もなく危機を冷笑的に傍観したりしている人材ばかりの、日本の経済専門家・メディアを見た時、暗澹たる気持ちになります。

構造が複雑化し、放っておくと危機を頻発しかねないグローバル金融システムを、それでもルールを改善することで、人々を豊かにする上で最大限に活用しようとし、真剣な議論を展開するルービニ教授をはじめとした、米国の経済・金融エリートたちの姿は賞賛に値します。

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バフェット投資の真髄

レベル3 ★★★★

世の中には、バフェットと銘打たれた投資本が星の数ほど出ています。私もかなりの数のバフェット本を読んできましたが、本書はその中でも最良の物の1つと言えます。

多くのバフェット本は、彼の投資行動を追っていて、その背景にある考え方を解き明かそうとはしませんが、本書ではバフェットの哲学はもちろん、バフェットがどのような経緯で投資スタイルを培ってきたかについて詳細に解説されています。

バフェットだけでなく、彼の盟友チャーリー・マンガーや、バフェットの投資の師匠とも言えるベンジャミン・グレアムとフィリップ・フィッシャー、そしてバフェットの考えを彼自身はあまり積極的に行わなかった海外投資やハイテク株投資に応用した投資家まで、数多くのバリュー投資家の投資スタイルも紹介されています。

なぜ、悲観的な見方が支配的であった2011年8月の投資環境でバフェットは、50億ドルもの大金をバンカメに投資をしたのか。この本を読むと、彼の50年に渡り一貫して実践してきた投資スタイルが理解でき、今回の投資もその1つの実践にすぎないと分かります。

残念ながら、日本の書籍や新聞、雑誌は直近数ヶ月の動向にばかり注目していて、長く実践に足る投資スタイルを紹介した、骨太なコンテンツはほとんどありません。そうした不満を感じている人達に読んでほしい秀作です。

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ウォール街のランダムウォーカー

レベル2 ★★★

株式投資に関する不朽の名著の第10版です。初版発行から40年が経ちましたが、「個人投資家にとっては、個々の株式を売買したり、プロのファンドマネージャーが運用する投資信託に投資したりするよりも、ただインデックスファンドを買ってじっと持っている方が、はるかによい結果を生む」というメッセージは変わりません。40年前に、1万ドルでS&P500のインデックスファンドを購入した場合(配当は再投資)、資産は46.3万ドルになり、プロの運用する投資信託を平均20.5万ドルも上回った結果からも、裏打ちされています。

インデックス投資家のバイブルとなっている本書ですが、アクティブ投資家にとっても参考になります。この本のタイトルである「ランダム・ウォーカー」は「過去の値動きから、将来の動きや方向性を予想することは不可能である」という意味で使われており、このランダムウォークと対極に位置する、株の動きは予想できると考えるテクニカル分析やファンダメンタル分析との論争についてかなりのページを割いて解説しています。

現代ポートフォリオ理論の重要な考え方である、「ポートフォリオ、ベータ、CAPM」パートは、アカデミックな内容まで突っ込んだ展開になっています。低PER戦略、小型株戦略など効率的市場仮説では説明できない株の動き、アノマリー戦略まで多岐に渡る内容もカバーしています。

今までの研究は、「投資家は合理的に行動すること」が前提でしたが、行動ファイナンスと呼ばれる新しい学問では、「人々は経済学者が思うほど合理的には行動しないものである」とし、投資家の非合理的な行動「①自信過剰、②偏った判断、③群れの心理、④損失回避願望」について解説しています。この分野は、金融機関が投資商品を作る際にも使われているので、売り手側の考えを学ぶのに役立ちます。

具体的な資産運用戦略についても書かれており、株式の理論から実践まで、投資上級者も満足できる内容になっているのはさすがです。 かなり読み応えのある本なので、じっくり腰を据えて読んでほしい本です。

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