バフェットの銘柄選択術

レベル3 ★★★

本書は、数あるバフェット本の中でも、最もバランスが取れている好著です。その理由としては、著者がバフェットの息子さんの奥様で、息子と離婚した後もバフェット本人と交流が深い人物であることが大きいでしょう。長年に渡り、バフェットの投資術を間近で見てきたことにより、彼の投資術が個人投資家にも分かりやすい形で解説されています。

バフェットの投資術は、「じっくりと優良株が割安になるのを待って、チャンスに一気に投資をし、継続保有する」というスタイルです。こう書くと、誰にでも出来そうな気がするのですが、彼の偉大な実績はそのスタイルを、他の商品がバブルにあるときも崩さなかったことにあります。

多くの同じスタイルの投資家は、ITバブルや米国の不動産バブルの時に、投資スタイルを変えバブル崩壊により大きな痛手を受けました。皆さんも、この本からバフェットの投資術だけでなく、その変わらぬ姿勢が重要であることを読みとって頂ければと思います。

日本でも、短期の値動きに一喜一憂せず、堅固で優れた事業モデルを持っている企業に長期にわたって成長資金を提供することで、大成功をおさめるという、真の投資家が増えていけば、投資文化がより成熟いくことでしょう。

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ザ・クオンツ

レベル3 ★★★★

「世紀の空売り」と合わせて読むことで、サブプライム危機がどのように発生したのか、手に取るように分かります。

クオンツは、ここ20年ほどで、金融業界におけるプレゼンスを急速に増してきました。多くのクオンツは、数学や物理学、情報学のPH.D(博士号)を保有し、その圧倒的な数理処理能力を活かして、デリバティブなど複雑な金融商品の価格を決定するメカニズムを作り上げてきました。

サブプライム危機はCDOやCDSなどの複雑なメカニズムにより、ゴミのようなサブプライムローンを原材料として、AAA(トリプルエー)など非常に高い格付けである商品を作りだした事が一番の要因ですが、そのメカニズムを作った張本人たちがこのクオンツです。

多次元の正規分布関数を扱うコピュラ関数など、投資銀行の経営陣や金融当局などにとっても、訳の分からない複雑な数学ツールを使いこなすクオンツ達を野放しにしたことが、金融危機の主因であることが、徹底した取材により解説されています。

クオンツ達の複雑なモデルが、暴落時に全く役立たなかった要因は、金融のリスクは正規分布では表わされず、それよりはるかに異常値が頻発するベキ分布に従うからです。

そして、サブプライム危機が恐ろしかったのは、本書の主人公たちであり上記のモデルの限界を十分に理解していたはずの、自分の数学能力を元に数千億円、数兆円の資金を動かしていたスーパースタークオンツまで、大打撃を被ったことです。

詳しい内容は本書に譲りますが、彼らはサブプライムローンを元にした商品がいずれ暴落することを予想し、そうした暴落への保険となるCDSを購入していました。しかし、AIGなどCDSを発行していた会社自体が吹っ飛ぶかもしれないという、未曾有の信用不安が発生した時に、彼らの投資商品は保険の役割を果たしませんでした。

私たちも不測の事態への備えを怠ってはいけないと本書を読んで認識を新たにしました。

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世紀の空売り

レベル3 ★★★★★

「ライアーズ・ポーカー」、「マネー・ボール」と、ノンフィクションの分野で立て続けに世界的ベストセラーを飛ばした著者の最新作。前2作も非常に優れた出来ですが、本書は米国の不動産バブルが世界的な金融バブルとして膨れ上がり、サブプライム危機が発生し、リーマンショックが起き、世界が不況に突入するという一連の流れの内幕を見事に解説した歴史的な名著です。

これを読めば、米国政府やゴールドマン・サックスやドイツ銀行という巨大投資銀行が、骨の髄まで腐敗していて、彼らが得となるバブル状態を意図的に作り出し、個人顧客はもちろん、法人の取引先までだませるものは全てだまして、徹底的に儲けようとしてきたことが良く分かります。

そして、最後はバブルの火の手に米国政府や巨大投資銀行まで飲み込まれていくのですが、この狂った構図を読み切り、サブプライムローンを元にしたCDOや、金融機関の株式を空売りすることで、金融危機の大暴落で巨額のリターンを得た人たちが主人公です。

世の中のほとんどを敵に回して、何年も耐えることで、自分達の考えが正しいと証明した主人公たちの知力、胆力は驚嘆すべきものです。一方、バブルを作りだした政府や巨大投資銀行のトップ達は、税金により救済され、バブルにより得た巨額の報酬も返還していません。

ボルカールールを始め、現在検討されている新しい金融規制により、間違いを犯した者はその責めを受け、正しい者のみ大きな報酬を得る、健全なマーケットメカニズムが少しでも回復することを願います。

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株式投資

レベル2 ★★★★

1990年代半ばに初版が出版されて以来、株式投資の中上級者にとっての名著と知られているものの第4版です。

本書の魅力は、そのデータの豊富さにあります。米国市場の株式や長期債、短期債についての、配当や上場廃止、デフォルトも含めた正確なリターンのデータがなんと1800年以降、200年分も載っています。また、物価推移も勘案した実質リターンも分かるので、長期投資家にとってどれくらいの実質リターンが見込めるのかが分かり、非常に役立つと共に、長期投資の有効性が超長期的なデータから証明されていて勇気づけられます。

実質リターンの話もそうですが、ETFやグローバル分散投資の有用性など、S&Sのセミナーで扱っている内容がほぼカバーされているので、セミナーを聞いた後の復習・ステップアップの教材として最適です。

このような研究がなされている、米国の金融学会はやはりすごいなと読後に脱帽しました。歴史的名著の★5つをつけるか非常に迷いましたが、行動経済学など最新の研究成果の分量が少し物足りなかったので、★4つとしました。

株式投資を知的に究めていきたい方は必ず読むべき本です。

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イェール大学CFOに学ぶ投資哲学

レベル2 ★★★

200億ドル以上の運用金額を誇る、世界屈指の機関投資家、イェール大学の寄付基金の運用責任者による投資全般に渡る解説書になります。

ウォール街でデリバティブの商品設計担当者をしていた著者は、1985年に現職の名門イェール大学の寄付金の運用責任者に任命され、2005年までの20年間に平均リターン16.1%という非常に素晴らしい実績を残します。米国の名門大学の寄付基金はハーバードを始め、非常に規模が大きいため、投資に関する最新かつ本当の情報が入ってくる立場にあります。

そうした豊富な情報により、株式・債券からオータナティブに至るまで、非常に広範な投資商品について解説がなされています。そして、投資信託を始めいかにウォール街が多額のコストを個人投資家に課して、食い物にしているのかがこれでもかと解説されています。

日本では投資商品を販売している金融機関の圧力が強く、中立の立場からの投資家にとって有益な投資情報に乏しいことが私たちの起業のきっかけでしたが、本書はまさにそうした有益な情報が提供されています。投資についてある程度、知識・経験がある人がステップアップするのに非常に有用な本です。

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リスク

レベル4 ★★★

人類は不確かなもの(リスク)についてどのように研究を進め、対処しようとしてきたのか、確率論というものが誕生したルネッサンス期から現代までの数百年の歩みが、500ページ近くの大著としてまとめられています。

これを読むと、いかに人類は確率というものを扱うのに不慣れかが分かります。科学は、古代ギリシャの時代から発達し、どんな場合にも適応できる不変の科学理論は発達をしてきました。しかし、投資やギャンブルという行為は古代から存在したにもかかわらず、その実態を解明する確率論はまだ生まれて数百年です。

投資やギャンブルといった人間の心理が関わる不確かなものは、長らく科学の分析対象としてみなされなかったということです。この本は1996年に書かれているので、デリバティブなども今とは比べ物にならない小さな市場ですが、それでもその危うさに警鐘が鳴らされています。

1998年にはオプション価格の理論でノーベル賞を受賞したマイロン・ショールズのファンドが破たんし、2008年にはCDO、CDSなどのデリバティブの価格急落により、グローバル金融危機が起きました。

まだまだ、未熟な確率/リスクを扱う理論。失敗を繰り返しながらも、発展させて行かなければならないことが良く分かりました。

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まぐれ

レベル3 ★★★

「ブラック・スワン」が大ベストセラーとなった著者が、「ブラック・スワン」の前に書いた作品です。個人的には、同じ内容の繰り返しが多い「ブラック・スワン」より、こちらの方が楽しめました。

著者の主張は、両書とも共通しています。人は株式市場において、経済学が想定しているように合理的ではなく、感情で動くので、値動きは正規分布ではなく、ベキ分布に従うということです。

もう少し分かりやすく言うと、正規分布では何十億年に1回しか起きないとされている異常値=ブラック・スワン(株式市場では大暴落や超高騰)が、ベキ分布でははるかに頻繁に10年に1度程度起きるという違いがあります。

どちらが正しいかは、ノーベル経済学賞の受賞者マイロン・ショールズのファンドが、ロシア危機に続いてサブプライム危機においても破たんしているのに対して、著者のファンドは大暴落の度に巨額のリターンをあげていることからも明らかです。

著者はヘッジファンドを所有しながら、応用数学の研究所も運営しています。経済的豊かさと知的満足度を両立する、最高にあこがれる生活です。この余裕ある生活から、「まぐれ」のような面白い本が生まれるのでしょう。

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マネー・ボール

★★★★

投資銀行の債券セールス部門での経験をもとに書いた「ライアーズ・ポーカー」が世界的大ベストセラーになった著者による、野球を統計的に分析することの威力を書いたこの本は日本でも反響を呼びました。

選手の年俸額でいえば下から数えたほうが早いアスレチックスが、なぜプレーオフの常連なのか。その秘訣は、皆が重視する指標、打者でいえば打率や打点、投手で言えば勝利数、セーブ数などは、チームの勝利にあまり関係がないという発見にあります。より重要な指標、打者の出塁率や長打率、投手の被本塁打数や奪三振率などを駆使することで、安い年俸でも常勝球団を作ることができる。

これは、投資においても王道のやり方です。世間で注目を浴びている高い株価の企業には見向きもせず、収益率の高さと安定性に優れている安い株価の企業を丹念に探し出す。本書の主人公の、アスレチックスのGMビリー・ビーンは、野球界のウォーレン・バフェットといえるでしょう。

本書は投資とは直接関係ないテーマですが、他人が重視していないけれども実は重要な指標を丹念に調べ上げ、その評価を元に論理的に行動することが成功に結びつくというポイントは、投資でも完全に同じです。アクティブ運用に取り組む個人投資家はぜひ参考にしてください。

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敗者のゲーム

レベル1 ★★★

米国の投資コンサルタントの第1人者である著者が、投資に勝つ心得をわかりやすく解説しています。その心得とは、本書のタイトルにあるように、市場平均リターンに勝つという「勝者のゲーム」を行うのではなく、市場平均をなるべく低いコストで達成するという「敗者(にならない為)のゲーム」に徹するべきという内容です。

市場には、「勝者のゲーム」を追求すべきという本であふれています。それは当然で、勝者を目指して売買を繰り返したり、新しい商品への切り替えを行ったりすることが、それらを販売している金融機関のもうけにつながるからです。また、「勝者のゲーム」を目指す作業は、自分の直観を信じて意思決定を行うことの楽しさや、自分自身や運用を任している人のスキルを過大評価しがちであるという、人間の本性にうったえかけるので、どうしてもその魅力にあらがえない人が多いのも仕方ありません。

しかし、投資で成功するには、自分で長期的な目標を考え抜き、その達成に必要な作業、それは往々にして非常に地味で忍耐がいる作業ですが、それを継続するしかないと著者は繰り返し主張しています。その考えは、私たちがセミナーで解説している理念と共通するものです。

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10万年の世界経済史

★★★

産業革命がおこるまで人類の経済はマルサスの罠、つまり1人あたりの所得が増えないため人口が多くなればみな貧しくなり、逆もまたしかりというジレンマに、人類は10万年もの間、捕らわれてきたという事実が解説されています。

マルサスの罠にとらわれた経済においては、全ての評価が今とは180度逆でした。人口を増やすような政策である福祉、衛生改善、医療保障などは人口を増やして人々を貧しくし、子供の間引き、不潔な衛生環境、老人の高い死亡率は人々を豊かにしたのです。

産業革命が日本で起きなかった理由の1つとして、江戸は当時の世界基準から見て非常に良好な衛生環境により人口が多く、所得が低く抑えられていたという事実があげられています。では、なぜ英国で産業革命が起きたのか。

都市における不潔な衛生環境、富裕層ほど出生率が高く上流階級のモラルが社会に広がった、アメリカによる食糧供給の改善等ありますが、他の欧州諸国も同じ条件で最も大きな理由は別のところにあると指摘されています。

産業革命からわずか200年で1人あたりの所得は60倍にまで成長しました。21世紀においても世界経済が成長を継続できるかについて貴重な視座を提供してくれる本です。

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たまたま –日常に潜む「偶然」を科学する

★★★

日常生活に偶然の要素がいかに大きいのかが分かりやすく解説されています。そして、多くの人が、物事の結果を個人の実力によるものと結論付けて、偶然の要素を過小評価しているかが良く分かります。

また、この本では人間が確率というものを判断する上で間違いをおかしやすいかについても多くのページが割かれています。数学者や医者であっても確率で間違いを犯してしまうことが、「1,000件 に1件しか間違いがない程正確なHIV検査で、異性愛者の白人男性が陽性になったとしても、実際に感染している確率は10%程度。でも、医者も保険会社も陽性であれば99.9%病気 であると誤認してしまい、たった1回の検査結果で保険に入れなくなった」といった様々な例から解説されています。

では、偶然の要素が大きい人生で努力しても無駄であるということが本書の結論なのでしょうか。著者は、「表が非常に出づらいコインであっても、何百回、何千回もコインを投げ続ければ、何回目に表が出るかは運次第だが、最後にはいつか表が出る」という言葉で努力の重要性につい て語っています。

私たちも成功してもそれが全て自分の実力とは過信せずに、謙虚な気持ちで努力することを継続していきたいと思いました。

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スノーボール

レベル3 ★★★★★

世界中の全ての投資家が認める人類史上最高の投資家ウォーレン・バフェットの初めての公認伝記。バフェット本人から信頼されている著者が、本人や親族、関係者への全面的なアクセスを許され、5年以上にわたって綿密な取材を行ったことで、バフェットのこれまでの80年の人生がリアルに描かれています。

この本の題名がスノーボール(雪だるま)になっている理由は、バフェットが投資を雪だるま作りと似ていると考えているからです。初めは転がしても転がしてもなかなか雪玉は大きくなりませんが、ある程度の大きさになってくると同じ労力でも飛躍的に大きさを増していくところは、投資と似ています。

勤勉で贅沢を嫌い、成功したのちには社会全体の為に寄付をするという彼の生き方は、アメリカ社会のロールモデルそのものです。バフェットは、1990‐91年のジャンク債バブル崩壊、98年のLTCM破たん、2001‐02年のITバブル崩壊、そして07‐09年のサブプライム危機と、金融危機が発生したときにはいつも大きな役割を果たしてきました。

残念ながら、本書にはサブプライム危機時の活躍は描かれていません。彼の活動を見ているとあと10年くらいは一線で活躍しそうです。10年後にぜひ同じ著者の、バフェットの伝記続編を読みたいです。

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