新賢明なる投資家

レベル2 ★★★

初版の「賢明なる投資家」が書かれたのは何と今から60年以上前の1949年です。しかし、書かれている内容は全く色褪せることがありません。本書が出版された当時は、大恐慌により株式市場が傷ついたままで、株式=ギャンブルと見なされていました。それを、知的な人間がその思考力を駆使してリターンを得る場まで、昇華させるきっかけとなったのが本書でした。

値動きに惑わされず、株式を企業の所有権の一部として本質的価値を見極め、価格がその価値を下回る時にのみ購入するというバリュー投資のスタイルは、この本により初めて世に生み出されました。周囲が熱狂している時も、絶望している時も常に冷静に本質的な価値を見極め、株価が正当なレベルまで戻した時に売るという姿勢は、マーケットで長期的に成功する上で不可欠な姿勢です。

グレアムの一番弟子のバフェットによる巻末の補遺も秀逸です。経済学者のお偉いさんで効率的な市場なる幻想を信じている人たちは、マーケット平均を長期的に上回ることは不可能だと言っています。しかし、グレアムの弟子たちの中から4人も、10年以上の長期に渡って年率でS&Pのリターンを7%以上上回る実績を残しているという強烈な反証が示されています。

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ブラック・スワン -不確実性とリスクの本質

レベル3 ★★★

黒い白鳥(ブラック・スワン)が発見されるまで、誰もがスワンは白いものだと信じていたように、金融市場においても誰もが想像しないとんでもないことが起きる。本書はサブプライム危機を予言した書物として、世界中で大ブームを巻き起こしました。

金融工学の大前提、正規分布が金融市場に当てはまらないというのが著者の一貫した指摘です。金融工学と著者の指摘のどちらが正しいか、ノーベル経済学賞を受賞し、かつ金融工学が隆盛するきっかけ、ブラック・ショールズ方程式を考案したマイロン・ショールズと本書の著者が運用しているファンドのパフォーマンスを比較してみましょう。

ショールズのファンドは、最初のLTCMがロシア危機により破たんし、その後に設立した2つ目のファンドも2008年のリーマンショック時に40%近くのロスを出し解散してしまいました。

一方、著者が関与したファンドは、金融工学では予測不能な大暴落が必ず起きるという見立てにより、超優良株のアウトオブザマネーのプットオプションを安価で大量に仕込み、暴落した時にその価値が何十倍にも跳ね上がることで、ITバブル崩壊や金融危機などの暴落相場のたびに巨額のリターンをあげています。

ノーベル賞を取っていようと結果で裁かれる金融市場は、非常に公平であるとともに厳しい世界であると本書を読んで再認識しました。

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マーケットの魔術師 -米トップトレーダーが語る成功の秘訣

レベル3 ★★★★

合計16名へのインタビューで本書は構成されていますが、マイケル・スタインハートとジム・ロジャーズの2名を除いて、ファンダメンタルよりもテクニカルを重んじているトレーダーです。世の中の投資手法は大きく、金融商品の本質的な価値 (ファンダメンタル)を重視するファンダメンタルと呼ばれる手法と、価格推移や出来高といったテクニカル指標を重んじるテクニカルの2つの手法に分けられます。

テクニカルが人をひきつける一番のポイントは、爆発的に資産を増やすことが可能な点ではないでしょうか。本書の登場人物であるマイケル・マーカスは10年で約3万ドルを約8,000万ドルに増やしていますし、日本の代表的なテクニカルトレーダーであるBNF氏は8年余りで約2万ドルを2.5億ドルまで増やしたようです。

もちろん、こうした爆発的な成功をおさめるトレーダーの陰には、膨大な数の失敗事例があります。そして、投資、とくにテクニカル手法で成功するにはセンスも非常に大切になってきます。お金を儲けたいという気持ちと努力だけでは到底成功にはいたらず、失敗してもめげずにマーケットと向き合い、自分に合っていてかつ勝てる手法を見つけ、その商法に忠実な運用を徹底できるかは、持って生まれた資質によるところも大きいようです。本書を読めば、こうした運用の世界の厳しさがよく分かります。

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ヘッジホッグ -アブない金融錬金術師たち

レベル3 ★★★★

題名が秀逸でヘッジファンドのヘッジ(Hedge)に貪欲な意味がある豚(Hog)を合わせて、著者自らも在籍しているヘッジファンド業界をけなしつつ、変わり者の意味があるハリネスミ(Hedgehog)というフレーズで業界に溢れている変人達をちくりと風刺するという、凝ったネーミングです。

著者はモルガン・スタンレーにおいて30年間ストラテジストを務めた実績から、金融業界において非常に顔の広い人物です。本書にも、世界最大級のヘッジファンド、タイガー・マネジメントの創業者ジュリアン・ロバートソンや、世界的ベストセラー「ブラックスワン」の著者ナシーム・タレブといった大立者から、プライドだけ一人前であえなく失敗してしまうMBA上がりの若者まで多彩です。

著者は、70歳まで投資銀行で働き、余生を暮らしていく上で十二分な資産を築いたにもかかわらず、銀行を辞めた後に自らヘッジファンドを設立した底なしの投資愛好家です。皮肉なタッチの文章の裏から、自分自身がこよなく愛する金融業界のことをわかってもらいたいという思いが伝わってきます。私もこれ位の年まで、嬉々として市場と向かい合ってプレッシャーをエネルギーに変えるような人物でありたいなと思いました。

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