カテゴリー: 投資全般

カジノとIR

★★

世の中ではハイパークリエイターという肩書や、沢尻エリカさんの元旦那といったところばかりがクローズアップされている著者の高城氏ですが、パーマネントトラベラーとして世界中を旅して各国の最新事情に詳しく、東京でのカジノ解禁についてのパネルのメンバーであったこともあって、世界中のカジノの実態がコンパクトにまとまっています。

トランプ次期大統領との会談の直後に急ピッチでカジノ法案が可決されたために、その背景にあるメカニズムについて色々なうわさが飛び交っていますが、めまぐるしい展開から議論が十分ではないとカジノに対して批判的な国民が過半を占めているようです。

本書では日本で今後どのようなカジノリゾートを作っていくべきか、最もお手本になると著者が考えているシンガポールのIR(統合型リゾート)を中心に、各国のカジノの展開について網羅的にまとめられています。日本では、そもそもIRがどんなものか知っている人が少なく、これ以上ギャンブル中毒者を増やすことにつながるという、IRの本質とはあまり関係ない議論ばかりが先行しています。

シンガポールで暮らしていて、マリーナベイサンズというIRによりシンガポール経済が活性化している成功例を目の当たりにしているだけに、今後の日本のカジノのあるべき姿について考える上では本書の内容は最低限の議論のベースとして把握しておくべきでしょう。

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原油暴落の謎を解く

★★★

原油価格の指標であるWTI原油は、2014年前半に1バレル110ドルに迫っていたところから急落し、16年前半には一時20ドル台まで下がりました。そこから、反発に転じて現在は50ドルをわずかに下回るレンジで推移しています。

原油は、全てのコモディティ(商品)の中で取引量が最大です。その原油価格が上記のように2‐3年でここまで激しく動くことは地上の何十億人の生活にも大きく影響します。本書は原油価格の形勢メカニズムについて、最新情勢はもちろん、原油についての人類の歴史的な歩みについてもコンパクトにまとめられています。

日本で原油価格をテーマとした書籍には、大国や産油国の地政学的な思惑や、国営石油会社・スーパーメジャーといったエネルギー企業の陰謀といった怪しげな言説が目立ちますが、本書は原油に関する実務に長く関わった著者ですから、客観的な事実に基づいて信頼性の高い議論が展開されています。

米国の競争力の源泉として、金融やITについての論考は多くありますが、エネルギー産業も勝るとも劣らないほど、米国が突出して強いことが本書を読むとよく分かります。特に、シェールガスやシェールオイルといった非在来型のエネルギー資源をなぜ米国だけが独占できるかについての本書の記述はとても勉強になりました。原油という身近な存在ながらも、その価格形成はほとんどの人にとって不可解な商品について、勉強を始める上で最適なスタートラインとなる良書です。

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世界をつくった6つの革命の物語

★★★

タイトルを見ると最新の科学技術の話と思うかもしれませんが、本書は人類の歴史を通じて重要な発明を6つ選びだして、発明されるまでの経緯とその発明が社会にどのようなインパクトがあったのか、超長期の歴史に渡って解説されたスケールの大きい書籍です。

その6つの発明とは、「ガラス」、「冷たさ」、「音」、「清潔」、「時間」、「光」です。ガラス以外は全て、トピックに関連する複数のテクノロジーについて解説されています。例えば冷たさであれば、最初は氷を何とか保存して暖かい地域に持っていくことで冷却を実現していましたが、冷蔵庫やエアコンなど人工的な冷たさの発明とともに、どのように新しいテクノロジーに移行し社会にどのような影響を与えたのか、1つのトピックを軸に長い歴史がコンパクトにまとまっているので、テクノロジーの持つインパクトの大きさがよく分かります。

本書を読んで印象的なのは、新たなテクノロジーが誰か1人の大天才によって突発的に見つけられるということはほとんどなく、多くの人による試行錯誤の歴史で徐々に進化していくということが分かります。印象的なのはエジソンによる電球の発見の記述で、彼が現代の起業家にも通じるセルフプロデュースに優れていたため、後世の人は電球をエジソンの功績と認知していますが、それは間違いではないものの、他にも多くの人が発明に貢献していたことが分かります。

ともすれば、テクノロジーの発展というと人工知能など目新しいIT関連のトピックばかりに目が行きがちですが、人類はその長い歴史の中で様々なテクノロジーを多大な苦難の上に創り出し、それによって周囲の人はもちろん、発明者も思いもしなかった形で社会への影響を与えてきたことが、本書を読むと分かります。テクノロジーが持つより本質的な価値に思いを馳せるようにしてくれる、テクノロジーへの愛が詰まった骨太の良書です。

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アルゴリズムが世界を支配する

レベル3 ★★★

タイトルを見ると近年の人工知能ブームにあやかった本のように見えますが、本書の出版は4年前で時代を先取りしていたことが分かります。本書が興味深いのは、アルゴリズムがどのように世界を変えているのかテクノロジーの観点から分析しているだけでなく、その担い手であるエンジニアの動向にも焦点をあてていることです。

本書の前半はアルゴリズムによる自動化がいち早く取り入れられた金融業界にフォーカスしています。金融業界では40年以上前からコンピュータによる取引の自動化が行われていて、そこからテクノロジーの発展とともにどのようにアルゴリズムの活用が拡大してきたのか、金融業界の記述だけでも普通の本1冊に匹敵するほど詳細に紹介がされています。

しかし、リーマンショックによって、コンピュータサイエンスのエンジニアがウォール街を敬遠するようになって、グーグルやフェイスブックに代表されるシリコンバレーのテック企業を目指すようになり、これらの業界でどのようにアルゴリズムが活用され高度な分析が行われているかに話が進みます。

本書が出版されて4年が経過したことで、音声や画像の認識、さらには自然言語処理など高度なアルゴリズムはますます生活の中に浸透してきています。本書の内容と現状との差分を把握することで、今後のアルゴリズムの発展の方向性について、色々な手掛かりを与えてくれます。

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ビッグデータの残酷な現実

★★★

日本でも浸透しきった感のあるビッグデータというフレーズですが、本書はハーバード大学の数学科を卒業して米国で大手出会い系サイトを創業した人物という、まさにビッグデータの専門家による作品です。データ分析により社会の様々な側面がどこまで定量的に把握できるようになったのかについて、具体例を多く交えながら解説されています。

出会い系サイトの創業者で、数千万人の会員の個人情報に基づいて、太古の昔から人間が関心を持っていた「ルックスがどれほど恋愛的な魅力につながるか」、「人種により異性への印象はどれほど変わるか」、「同性愛者など性的マイノリティはどれほど存在するか」など、恋愛にまつわる様々なトピックについて、結果がすばりまとめられています。

著者はデータ分析の専門家なので、後半では恋愛に関するトピックだけでなく、政治的な意見や知能レベル、反社会的な行動をとるリスクなど人間の振る舞いの様々な側面について、ビッグデータ時代ではデータ分析だけで、かなり事実に肉薄できることについても解説されています。

SNSがあまねく世界に浸透し、オンラインでのコミュニケーションがますます活発化する中、積極的に情報発信をしていなくても、ただWebやSNSを閲覧しているだけで、個人の様々な特性が高確度で推測できることは十分に認識していたつもりですが、本書の分析の多くはその認識を上回り怖さも覚えます。

情報のシェアが進む中で、もちろん良い面だけでなく悪い面もありながらも、こうしたトレンドを追い風に自分のプレゼンスをどんどん上げて行ける人とそうでない人との格差も、どんどん進んでいくだろうなという感想も持ちました。

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ビッグデータと人工知能

★★★

またまた人工知能の本を取り上げますが、ここまで紹介してきた一連の人工知能本と本書は趣が異なります。それは、ここまでの本が人工知能の進化の凄さと将来の可能性にフォーカスしているのに対して、本書は安易な人工知能に対する期待を戒める内容となっているからです。

本書の著者の西垣氏は、私の大学院時代の恩師です。私が通った大学院である東京大学の学際情報学府は文字通り、文理の垣根を超えて学際的に情報に関する学ぶという野心的な目標を掲げて新設された大学院でした。西垣氏はこの大学院において目玉の研究者で、実際に彼の授業は分野を縦横に、最新の情報学に関するトピックが繰り広げられてとても刺激的な内容だったことを記憶しています。

本書を読んで、西垣氏の舌鋒鋭い評論が全く衰えていないことを知ってとてもうれしく感じました。西垣氏は現在3回目のブームを迎えている人工知能について、約30年前の前回のブームの際に世界の先端を行っていたスタンフォード大学で研究していました。前回の人工知能ブームはエキスパートシステムに代表される知識群をコンピュータに付与することで、人工知能に専門家を代替させることを目指しましたが大失敗に終わりました。

そして、西垣氏は現在の3回目のブームでもてはやされているディープラーニングやシンギュラリティに同じ危うさを感じています。人工知能ブームに乗って斬新さや奇抜さにフォーカスを当てた情報発信ばかりが注目をされるので、上記の用語とともに人工知能の発展の本質が誤って理解されている現状を著者は強く憂いています。

もちろん、人工知能の発展とその可能性を否定するのではなく、ビッグデータと昨今の人工知能のテクノロジーの進化でどのような成果が期待され、社会の構成員としてどのようにその成果を受け止め、正しく使っていくのかについての心構えが丁寧に解説されています。安易な人工知能本に辟易している人は、本書でフラットな視点を手に入れてから自分の思考をまとめていくことがオススメです。

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人間さまお断り

★★★

最近、この書評でも人工知能に関わる本を頻繁に取り上げていますが、本書も邦題にあるように人工知能の進化によって人間の労働のかなりの部分が必要なくなるという内容です。原題は”Human needs not apply”で、人工知能のみを対象とした労働募集という、より著者の意図が伝わりやすい表現になっています。

こう紹介すると、人工知能ブームに乗っかって過剰に危機をあおろうとしていると感じるかもしれませんが、スタンフォード大学の研究所で人工知能について研究し、シリコンバレーでいくつものベンチャーを成功させたシリアルアントレプレナーという顔も持つ著者による地に足がついた分析が展開されています。

著者が人工知能による社会へのインパクトとして最も懸念しているのは経済的な格差拡大です。社会学の研究者ではなく、アマゾンのジェフ・ベゾスやDEショーのデービッド・ショウといった人工知能時代の覇者も知り合いに居る起業家が、格差拡大に関心をもっているということからも、人工知能により更なる格差拡大が引き起こされる可能性が高いことが伝わってきます。

人口知能の進化に伴って人間がやるべき労働内容と、それに必要となるスキルが急速に変化しているにも拘わらず、教育機関がそれに対応していないため、教育ローンを抱える低所得者や失業者が絶望的な環境に置かれている著者の指摘は心に突き刺さります。

単なる警鐘だけでなく、上記の問題に対しては就業機会と対応した形式の教育ローンなど、具体的な対策まで提示されているので、人工知能の進化の影響とその対応策について思索したい方にとっては絶好の入門書と言えるでしょう。

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人工知能が金融を支配する日

レベル3 ★★★

人工知能が第3次ブームを迎えて、メディアでもこのワードを見ない日はありませんが、金融業界においてもアルゴリズム取引の増加など人工知能の影響についても関心が高まっています。本書はタイトルだけ見るとキャッチーなタームをちりばめて、人工知能ブームに乗ろうとした本のようにも見えますが、内容はしっかりとしています。

著者は邦銀でトレーディングの一線に長くいた方なので、歴史的に金融業界が現在人工知能と呼ばれている様々なテクノロジーを利用してきたことについて精通していて、歴史的な経緯から最新の情勢まで詳しくまとめられています。

特に、米国のルネッサンス・テクノロジーズやブリッジウォーター・アソシエイツ、シタデルといった米国の巨大ヘッジファンドが、どのように最新の機械学習やディープラーニングに代表される人工知能分野のテクノロジーについて取り組んでいるのかの事例については私も知らないことがあり有用でした。

著者は本書の中で繰り返し、このままでは先行している上記のような米国の巨大ファンドが洗練された人工知能分野の金融テクノロジーを独占してしまい、日本を始めとした他国の金融機関や個人は搾取される一方になる可能性があることを指摘しています。

金融業の歴史が始まってから最も破壊力のあるテクノロジーと言える現在の人工知能に関わる技術が今後どのように金融業界、ひいては社会全体にインパクトを与えるのか、関心がある方は議論のスタートとして必要な知識がコンパクトにまとまった良書です。

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不屈の棋士

★★★

この書評では資産運用やビジネス、テクノロジー、サイエンスがテーマの本を中心に扱ってきて、将棋をメインとした書籍は初めて紹介します。この本をこちらの書評で紹介したのは、棋士たちとファンドマネージャーが置かれている状況が、人間vs人工知能/ソフトウェアという点で極めて似ていると感じたからです。

本書は、近年ソフトが飛躍的に強くなって劣勢に立たされている棋士たちに、ソフトや人工知能についてどのように感じているのかインタビューした内容を中心に構成されています。自分たちの存在価値を脅かしている存在について聞くというのは中々センシティブな事ですから、長く棋士たちに取材している筆者だからこそ聞き出せた内容でしょう。

棋士と言えば羽生善治氏が一般的には圧倒的な知名度を誇り、羽生氏は本業だけでなく、最近では人工知能をテーマとしたNHKスペシャルに出演するなど、日本では知性の象徴の様に見られています。将棋よりはるかに知名度を誇るチェスについても、20年ほど前にIBMの開発したソフトに世界チャンピオンが負けた時はセンセーショナルに報道されましたし、今年はボードゲームの中で最も局面が多いとされる囲碁でも、グーグル傘下のディープマインド社がディープラーニングという最新の人工知能の手法を用いて、これまでの予想よりもはるかに早く世界最強クラスとされる棋士イ・セドル氏を破ったことも世界的な話題となりました。

そして、冒頭で紹介したように、ヘッジファンドの世界でも近年人間のマネージャーが率いるファンドよりも、アルゴリズム取引を主とするファンドの方が総じて成績が良いということが話題となっています。これまで人間の牙城とされてきた知性にまつわる作業においても、ソフトウェアや人工知能が次々と侵食してきています。そうした時に、その道のプロは何を感じどのようにこうしたテクノロジーと向かい合うべきなのか、そして人々や社会はどのような感想を持つのかについて、本書からは色々な示唆が得られます。

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貨幣の新世界史

レベル3 ★★★

貨幣についての世界史という大仰な邦題がついていますが、内容はそれに恥じない大作です。著者は投資銀行マンですが、リーマンショックによりお金の本質を知りたいという欲求にかられ、太古の歴史からお金と人類はどのように向き合ってきたのかについて調べ始めます。

投資銀行という激務の中よくぞこれだけ多彩な文献にあたり、必要であれば世界中の現場を訪れたと感動するほど、本書には紀元前の人類の歴史におけるお金のはたしてきた役割について、網羅的にまとめられています。人類の歴史だけでなく、貨幣というモノの本質は生物間の交換であるから、何十億年にわたる生命の発達についての記述まであります。

人類の歴史以外の記述は少しやり過ぎの感もありますが、著者のお金の本質に迫りたいという知的欲求がいかにすさまじいのかの表れでしょう。マイナス金利や異次元の金融緩和など、最近は人類が経験してこなかった未曾有の減少がお金の世界で起きていますが、その本質について深く理解するには、本書にまとめられているようなお金の歴史を知っておくことが不可欠でしょう。

一般的な経済書では決して学べない超長期的なお金の歩みが理解できる良書です。

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ネルソン・マンデラ 未来を変える言葉

★★

20世紀最後の偉人と呼ばれるネルソン・マンデラの発言の中から、ジャンルごとに明言をまとめた書籍です。マンデラは言わずと知られているでしょうが、南アフリカのアパルトヘイトに対して反抗したことで27年にもわたって投獄されても信念を曲げずに、最後は南アフリカの指導者となり世界から尊敬を集めた人物です。本書には革命の闘士だった時代から晩年に至るまで幅広い時代の発言がまとめられています。

私がマンデラにまつわるエピソードで印象的に覚えているのは、1994年のラグビーW杯の南アフリカ大会で日本代表から150点近くとるなど破竹の勢いで決勝まで来た、当時世界最強とされたNZ代表オールブラックスの面々が決勝の相手である南アフリカの指導者マンデラと握手したときに明らかに気圧された表情をしたというエピソードです。屈強な男たちを肉体からではなく、その偉業により精神的に圧倒したことが、大番狂わせといわれた南アフリカ大会での南アフリカチームの優勝を呼び込んだと複数のコラムニストが指摘していました。

本書にまとめられている言葉は確かに素晴らしい内容です。しかし人は言葉だけでは心を動かされることはありません。マンデラ自身の不屈で気高い行動があってこそ、本書にまとめられている言葉は意味を持ちます。本書を読んで、マンデラの人生の歩みについて深く知りたいと感じました。評価が星2つとなったのは、各ページに2‐3個の言葉のみという内容の少なさによるもので、もちろんマンデラの言葉自体は珠玉のモノばかりです。

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シンギュラリティは近い

★★★

テクノロジーの進化がAIの発展により加速度的になっていくというシンギュラリティというタームは、日本でもかなり浸透してきています。本書は、そのシンギュラリティという概念を最初に世の中に打ち出した、レイ・カーツワイル氏の書籍です。

元々、カーツワイル氏によって2007年に書かれた600ページ以上の大著から、エッセンス部分を抜き出した要約版となっています。カーツワイル氏は現在、AIで世界最先端を進んでいるグーグルで、機械学習と自然言語処理の研究責任者を務めている著名なエンジニアですから、本書で展開されている2045年にはシンギュラリティが訪れて、22世紀には銀河はおろか宇宙全体に人類が進出するようになるという予想を一笑することはできません。

ただ、一方で2007年に予測された2010年代に達成される技術的内容は、残念ながら2016年現在ほとんど実現しておらず、本書の内容を全て真に受ける訳にはいきません。確かにグーグルを筆頭にAIの開発は急速に進んでいて、10年以上先と考えられていた囲碁で世界トップクラスの棋士を打ち破るなど、着実に世の中にインパクトを残す成果は出てきています。しかし、本書で予測されている2030年までにAIが完全に人間の頭脳を凌駕して、科学研究を加速度的にAIが行っていくことで、人類も脳をそのままデジタルデータとしてサイバースペースにアップロードして永遠の存在となっていくというのはあまりに楽観的過ぎるでしょう。

本書の楽しみ方としては、グーグルの研究開発者はこれくらい楽観的かつ野心的なビジョンの持ち主で、だから米国のトップIT企業は懐が深く、本書の内容のどれくらいの割合が、どれくらいの時間軸でこうした米国のトップIT企業を中心に実現されそうか、読者それぞれが想像しながら読み進めるという姿勢が良いと思います。

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