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優れたインターフェースの高機能スマホを、アップルやサムスンといった一流ブランドの半分以下の値段で提供することで、中国のスマホ市場を席巻しているシャオミの創業者、雷軍(レイ・ジュン)の伝記です。
本書のタイトルにあるように雷軍は、プレゼンの時の振る舞いや服装においてスティーブ・ジョブズを模倣していると言われており、中国のスティーブ・ジョブズとして欧米メディアで紹介されることが多くなっています。また、シャオミのOSはグーグルのアンドロイドを使っていますが、独自のユーザインターフェースを開発することで、製品の見た目も、使い心地もiPhoneとそっくりに仕上げられています。
こう書くと、中国メーカーにありがちな模倣者のように聞こえるかもしれません。しかし、中国の消費者も所得が上がるとともに、海外に旅行した経験を持つ人も増え、いくら安くても単なる模倣品ではシャオミのように成功することはできなくなっています。
本書で初めて、雷軍はシャオミを立ち上げる前に、大手ソフトメーカーの社長を20代で務めるなど、中国のIT業界の興隆において重要な人物であったことを知りました。そして、今まで培ってきた中国IT業界における人脈と知見がシャオミの大成功につながっていることが分かります。ただ記述が、時系列が前後しながら進むため、中国のIT業界に詳しくない人にとっては内容が理解しづらいことが残念です。
シャオミは、スマホ業界に限らず全業界で見ても、史上最速のペースで拡大している企業で、創業わずか5年で売上1兆円を達成しました。雷軍はまだ45歳で、アリババの創業者ジャック・マーが50歳、テンセントの創業者である馬化騰は43歳です。
日本では例がない40~50歳で、時価総額が10兆円以上の企業を率いる創業者たちが、これまで製造業が中心であった中国経済の次世代の成長を駆動していくと感じさせられます。