レベル3 ★★★
大ぶりなタイトルが付けられていますが、内容もそれに恥じない骨太な内容です。古代メソポタミア文明から現代の金融工学まで、対象となる時代が長い分駆け足とはなっていますが、人類がどのように金融において発展を遂げてきたのか、歴史上のトピックを追いながら分かりやすくまとめられています。
特に、本書の白眉は、その長期間にわたる定量データでしょう。日露戦争時の日露両国の債券利回りの推移から戦況を各国の投資家がどのようにとらえていたかという記述や、世界大戦中の日米の株価の推移、日本円と米ドルの明治時代からの為替レートの推移などは、本書で初めて目にしました。定量的なデータから、遠く時代が離れた当時の状況がよくイメージでき、現代の金融市場における値動きの相似性に驚きました。
また、欧州の中世からの覇権争いなど、これまで歴史的な事実としては知っていた事象が、金融という観点から解説されることで、より体系的な理解を得られるということも新鮮でした。これまでの書評でも度々書いてきたとおり、日本ではなかなか優れた金融ノンフィクションはないと感じてきましたが、そうした観念を見事に覆される力作です。
資産運用をしているとどうしても近視眼的になりがちですが、ぜひ本書を読んで投資における大局観を培っていただければと思います。