原油暴落の謎を解く (文春新書)

★★★

原油価格の指標であるWTI原油は、2014年前半に1バレル110ドルに迫っていたところから急落し、16年前半には一時20ドル台まで下がりました。そこから、反発に転じて現在は50ドルをわずかに下回るレンジで推移しています。

原油は、全てのコモディティ(商品)の中で取引量が最大です。その原油価格が上記のように2‐3年でここまで激しく動くことは地上の何十億人の生活にも大きく影響します。本書は原油価格の形勢メカニズムについて、最新情勢はもちろん、原油についての人類の歴史的な歩みについてもコンパクトにまとめられています。

日本で原油価格をテーマとした書籍には、大国や産油国の地政学的な思惑や、国営石油会社・スーパーメジャーといったエネルギー企業の陰謀といった怪しげな言説が目立ちますが、本書は原油に関する実務に長く関わった著者ですから、客観的な事実に基づいて信頼性の高い議論が展開されています。

米国の競争力の源泉として、金融やITについての論考は多くありますが、エネルギー産業も勝るとも劣らないほど、米国が突出して強いことが本書を読むとよく分かります。特に、シェールガスやシェールオイルといった非在来型のエネルギー資源をなぜ米国だけが独占できるかについての本書の記述はとても勉強になりました。原油という身近な存在ながらも、その価格形成はほとんどの人にとって不可解な商品について、勉強を始める上で最適なスタートラインとなる良書です。

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